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第21話

お久しぶりです(*' ')*, ,)


レアナ視点です!

「……レティ」


沈黙の中、頭を抱えた父が呟く。母も兄も俯き加減で顔が暗い。ここ数日慌ただしくなっていた公爵家にやっと落ち着きが取り戻された。むしろ、落ち着き過ぎている。口を開くことすらできない。


……姉様が無事で……よかった。


私は手に持っていた写真を折れないように指先できゅっと握る。……姉様が生きていた。そして、私達のもとには帰らない。彼女は───幸せになる。姉様に謝ることはできなかった。それどころか、まともな会話一つ交わせなかった。でも、それでよかった。


……あれ以上一緒にいたら……血迷って、レオン殿下と姉様を───


私は、想像し身震いする。まぁ、そんなことをすれば、彼が黙っていないだろうが。彼───隣国の皇太子、ルーカス殿下。今まで、姉様に見合うのはレオン殿下しかいないと思っていた。しかし、それは間違いだった。姉様とルーカス殿下はほんとにお似合いだった。湖の向こうから微笑み合う二人の姿は……言い表せないほどの美しさだった。


彼以外に、姉様を幸せにできる人はどこにもいない。ただ……彼の姉様を見つめる瞳の奥が、どことなく翳っているような……そんな気がした。単に彼の濃い青の瞳のせいだろうが。


ルーカス殿下の話はよく聞いている。遠目からしか見たことはなかったのでわからなかったが、噂通りの眉目秀麗だった。彼のご両親もそれはお顔が美しいそう。だから、彼は姉様を見ても正気でいられるのかもしれない。才色兼備で剣技も成績も、人柄も。全て完璧。浮いた話がなく、女性に興味がなく冷たいという噂があったが、姉様と共にいる彼は───


ふふっと私は笑ってしまい、はっとする。同室にいる三人の視線が刺さる。私は気まずくなり、俯く。父が思いため息をつくと、口を開く。


「……レティは、ルーカス殿下と一緒にいて、楽しそうだったのか?」


「何を言っているの!? 違うに決まってるわ! レティは……無理矢理、婚約を申し込まれたのよ! ……あぁ、私のせいで」


「……レティは僕達のことすら好きにならない……僕達がそうさせた。……きっと、あの男も、レティの容姿で選んだんですよ」


「……違います!」


兄と母が二人のことを誤解しているので、思わず叫んでしまう。……でも、誤解してしまうのも無理はない。だって、私しか、あの幸せそうに笑う姉様とルーカス殿下を見ていないのだから。いきなり───婚約の申し込みの手紙を渡され、姉様を家には返さなかったのだから、心配する気持ちもわかる。……でも、ここに来たら、姉様はまた、あの人形のような感情のない姿に戻ってしまう。


「……あなた達が悪いんですよ!? だって、姉様を苦しめるから。こんなところに、姉様が帰ってきたいと思うわけがないじゃないですか!」


「……それは、レアナ、あなたが結婚式を」


「いえ! それだけではありません! 私達が姉様に厳しくしていたから……褒めなかったから……愛を与えなかったから……」


私が何年も抱えていた悩み。彼らに追求できず……苦しかった。でも、姉様の方がずっと、ずっと……


「お父様、お母様、兄様……なんでっ、だって、私達は姉様のことが……大好きでしょう? それなのに……なんで、姉様を不幸にしようとするんですか?」


私が声を荒げそう言うと、彼らは俯く。私は、息を吸い、落ち着こうとするが、上手く息が吸えず、喉が震える。


「……姉様は、幸せそうでした。今までにないくらい。ルーカス殿下と微笑み合っていました。とても……自然に。……まるで、それが当たり前かのように。レオン殿下が無理矢理、姉様を連れて帰ろうとしたら、姉様はその手を振り払いました。姉様は、ルーカス殿下を選びました。……ここに戻ってくるのではなく」


『ルーカス様のものです』


姉様ははっきりとそういった。今までも剣技をやっているとき、勉強をしているとき。かっこいいと思ったことは何度もあった。しかし、どこか諦めたような、陰った瞳でないときがなかった。


父、母、兄はみな俯いたままだ。彼らは今何を考えているのだろう。今まで、何を考えていたのだろう。


どうして、姉様を───


「……っ私が、悪いのよっあのレオン殿下の誕生日会に連れ出したからっ」


突然、涙をながし、顔を歪めた母が口を開く。嗚咽をあげ泣く彼女を初めてみた。そして、母の肩を擦る兄が続いて口を開く。


「いや、僕が悪いんだ。僕に力がなかったから……レティを守れなかった。僕のせいで……」


「いいや、私が悪かったんだ。レティを表に出すべきではなかった。すべての責任は私にある。レティを追い詰めたのも。すべて……私のせいだ。……すまない、レティ」


兄と父が涙を流す姿を初めて見た。私は混乱する。


「……どういうことですか? お母様、兄様……お父様。なぜ? なぜ、姉様を虐げるようなことをしたのですか?」


父はゆっくりと私の目を見つめる。


「……あぁ、こうなるのなら、ちゃんと話しておくべきだったな。……レオン王子にも。……私のせいで、レアナ、お前にも辛い思いをさせてしまった。エラとアレンにも」


「私が提案したのですからっ」

「同意したのは僕です!」


「……お父様も、辛かったのでしょう。でも、だからといって、私は簡単には許せません。……なぜ!?」


父は両掌を組み、ぎゅっと握る。母のすすり声だけが部屋を響く中、兄が父を見つめる。重い雰囲気が漂う。


「……レティが、五歳のとき、初めてレティを表に出した。レオン殿下の誕生日会のとき。公爵家の娘だ。レオン王子とは親交を深めておいたほうがいいと思った。それに、五歳ともなれば、外の世界のことも知ったほうがいい……そう思ったんだ。……しかし、それが、だめだった」


父がさらに握る手を強め、爪が食い込み、赤くなっている。


「……レティは、あまりにも美しすぎた。あの場にいる誰をも魅了した。単なる好意ならよかった。……だが、歪んだ者もいた。エラとレアナが家で待っていたから、誕生日会は直ぐに退き帰ってきたが、次の日から、レティへの手紙が山ほどきた。またレティを一目見たいという手紙や、レティと仲良くなりたいという手紙ならまだ良かった。しかし、中には、五歳の少女への求婚の手紙がいくつもあったし、レティが自分に向けて微笑んだと自負するもの、レティは天使であり人ではないから神殿で崇拝するべきだと訴えるもの……異常だった。しばらくすれば収まるだろうと思い、無視していたのだが、日が経つにつれ、エスカレートするばかりだった。手紙の内容も過激になり、脅迫じみたものが増えた。髪の毛や血のついた婚姻届など、気味の悪い物を送って来る者もいた。終いには、公爵家に直接やって来て、レティを連れ去ろうとする輩までいたんだ」


もちろん、姉様の美しさはわかる。そして、笑顔の破壊力も、とてもこの世のものとは到底思えない。……ある意味、私やレオン王子が姉様に対して歪んだ気持ちを持とうとしたのは当然だったのかもしれない。小さい頃は笑顔の姉様が身近でそれが普通、だった。しかし、久しぶりに見たとき、とても正気ではいられなくなってしまったのだ。


「……護衛はいるものの、やはり不安だった。レアナがまだ小さかったから、家族で屋敷を離れることもできなかった。……レティは聡い子だった。……きっと、異変に気づいていたのだと思う。私が隠しきれなかったんだ。……あの子は気を病んでしまい、寝付きも悪くなり、体調をよく崩すようになった。……私達はその頃はレティに元気に笑顔でいてほしい。そう思って、母さんのところへ預けることにしたんだ。レティは母さんのことが大好きだったし、彼女はああ見えて、私より強い剣士だったから。あの家は私達と、御者、そして、隣国の王家しか知らなかったから。一番安全な場所だった」


姉様がお祖母様のところで預けられた理由がそういうことだったのだと初めて知った。


「……レティは母さんのところへ行って、元気を取り戻した。そして、レオン殿下の誕生日から半年が経ち、手紙や不審な行為も落ち着いた。そろそろ、レティを屋敷に戻してもいいのではないかと思ったんだ。……しかし、それが一番の失敗だった」


父が声を震わせると、すすり声が小さくなった母が兄の胸に頭をよせ、肩を大きく震わす。兄は顔を歪め、苦しげな表情を浮かべ、母の肩を持つ手と反対の手で、剣の持ち手を強く握りしめる。


「……あの日、私はレアナとエラを残し、屋敷を空けるのは危ないと思い、アレンにレティを託した。アレンは十一歳でも、並の騎士より強かったから他のものに任せるより、安心できると思った。母さんはもちろん、騎士団長や他のマーティン家の騎士も顔が割れてしまっているから、見つかればレティがいるとバレてしまうから。馬車もマーティン家の紋章が入っていない質素なものにした。レティも白髪は隠したし、帽子で顔を見えないようにした……完璧なはずだったのに……一体なぜ」


「……僕の責任です」


「……いや、私が不十分だったんだ。……すまない」


兄が悔しそうに唇を噛み締め言うと、父は兄に頭を下げる。下げたまま、


「……どうして、レティが誘拐されてしまったのだろう」


そう呟き、肩を震わせる。


……誘拐? 姉様が?


そんな話、初めて聞いた。マーティン家の警備は学園や下手したら王城よりも厳重だ。父と兄、それに、姉様は国で最も強く、私は今まで誘拐なんて文字が頭に浮かんだことはなかった。


「……あのときは、ほんとに、………っ………ごめん………レティ。………すまない。……っ私が間違っていたのだろう。………私のせいで」


父が泣きながらごめん。と、ここにはいない姉様にひたすら謝り続ける。


「………僕が、守れなかったからです。………っこんな傷負ったくらいで……レティを手放すなんて………悔やんでも………悔みきれない」


兄が両手を右横腹に当てると、傷がある辺りを力いっぱい握りしめる。以前兄にその傷はどうしたの?と聞いたことがある。そのときは、笑ってこれは、戒めなんだと言っていたが……姉様が誘拐されたときに怪我をしたのだろうか。今でもはっきりと残っている傷は、十一歳の子供には致命傷だったに違いない。


「………どれだけ、レティが………っ……あんなに衰弱して、………傷ついて、………思い出すと、………はぁ、……はぁ」


母の呼吸が乱れ、息が上手く吸えていない。過呼吸になっている。


「……お母様?」


「……アレン。エラを連れてってくれ。これ以上はエラにも……お前にも辛い思いをさせるだろう」


「……でも、父さんは」


「私には責任がある。最後まで、レアナに話す。いつまでも、辛いからと言って、逃げていた結果がこれだ。……本当にすまない」


兄は口を噤む。唇から血が流れている。下を向くと、母をゆっくりと立ち上がらせ、部屋をあとにする。父は兄と母が部屋を出ていくのを見届け、苦しげな表情を浮かべる。

随分前に書いたものなので、誤字脱字等あったら教えてください(* > <)⁾⁾

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