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第1話

私の人生は不幸せなものだった。しかし、それも今日で終わる。愛はなくとも、一国の王子と結婚すれば、完璧主義者で厳しいお父様とお母様、お兄様から離れられる。そして、可愛い妹からも……


「今日で、終わるのね」


たくさんの侍女によって、用意された白いウエディングドレスを身に着ける。白髪の長い髪も綺麗にまとめられ、白いヴェールに包まれる。鏡に映る自分はどれだけ着飾ってもいつも通り、無機質な人形のようで気持ち悪い。


結婚式は人生で一番で最高の日になるのよ。


亡くなったお祖母様はそう言っていた。私は微かに期待を寄せ、教会へ向かった。



***



「私は、彼女と結婚する気はない!」


教会中、いや、この小さな街中に響き渡るよく聞き慣れた声。突然のことに、私は彼が何を言っているのか理解できなかった。しかし、彼に忌み嫌うかのような目で見つめられ、やっと理解する。


彼は、私のことを嫌っているのだと。愛されているとは思っていなかった。しかし、嫌われていることには気づかなかった。……彼は唯一私に優しく接してくれる相手だったから。でも、少し考えればわかることだった。彼は王子だから、私にも優しく接してくれていたのだと。


「私には愛している者がいる。さぁ、おいで、レアナ」


「えぇ、レオン」


レアナ───淡いピンクのドレスを着たウェーブがかった白銀髪の少女。私の妹はレオン王子……私と結婚するはずの相手の手を取り、隣に並んだ。私は何が起こっているのか理解できなかった。


今日は私と殿下の結婚式で、レアナは私達を祝福に来たはずだ。それなのに、どうしてレアナを殿下が抱き合っているのだろうか。


「私は、レアナを愛している。そして、レアナも私を愛している。そうだろ?」


「はい、そうですわ」


あぁ、そうだったのか。殿下もやはり、可愛らしいレアナのことが好きなのね。お父様やお母様、お兄様だけでなく、あなたも……


レアナと殿下が互いを熱く見つめ合うのをただただじっと見つめる。すると、レオン王子が少しばかり視線をこちらに向ける。


「私は、レアナと結婚する。……何か、異論はあるか? レティシア」


異論……そんなものない。二人が愛し合っているのなら、仕方がない。そもそも、王子に反論できる人などいないのだ。それに、レアナも公爵家の人間だ。レアナが殿下と結婚すれば、マーティン家と王家の繋がりも保たれる。


私じゃなきゃいけない理由なんてない。こんな無表情の人形なんて……消えてしまえばいいのに。


今まで王妃になるために、色んなことを頑張ってきた。でも、どんなに頑張っても誰も認めてくれない。とても苦しかった……それでも弱音を吐かずに、必死にがんばって……っ


私は泣きそうになるのをこらえる。これ以上、二人を見ていると憎しみが溢れてきて、抑えられなくなる気がした。目に涙を浮かべながらも、精一杯の笑顔をつくる。


「どうぞ、お幸せに」


そう言い、二人を背に走りさる。横目に見えたお父様とお母様、お兄様の顔は無表情だったが、明らかに、怒っていた。


それもそのはずだ。出来損ないの私がやっといなくなるはずだったのに、王子から見捨てられるなんて。公爵家の恥でしかない。王子に結婚を拒まれた私の新しい嫁ぎ先なんて……見つかるかも危うい。彼らは私をせっかくここまで王妃にさせるために育ててきたのに、今日、この場で全部無駄になったのだ。


私は酷い顔を見せないように下を向き、ただひたすら走るだけだった。


もう家には帰れない。これからどうしようかと考えなければならないのに、そこまで思考が回らない。


教会の外にでると、結婚の祝福をしに来た人々が不思議そうな顔で私を見る。


「……お嬢様?」


その中に昔からの使えている御者がたまたま私を見つけてくれた。彼は心配そうに私に声をかけてくれているが、私は言葉が詰まり何も言えない。彼はそんな私を公爵家の馬車まで連れて行ってくれた。


「大丈夫ですよ、お嬢様」


子供のように泣きじゃくる私をなだめてくれる。何があったか気になるだろうが、何も聞かず、ゆっくり背中をさすってくれる。


お祖母様を思い出す。お祖母様が生きていた頃、よく勉強をすることや家に居るのが苦しくなったとき、こっそりと逃げ出していた。……お祖母様の隣だけが、私の居場所だった。


「レティは偉いねぇ」


そういい、愚痴をこぼし泣く私をなだめてくれた。けれども、家に帰れば……


「レティ、まだ勉強をサボったの? 王子の婚約者なのだからしっかりしなさい!」

「レティ、この案だがこことこことここ、全然だめだ。やり直しなさい」

「レティ、マーティン家の一員だろ。さぁ立ちなさい。こんな様では公爵家の恥になる」

「まぁ、おねぇ様そんな汗だくになって、女の子なのだから剣技なんてやらないで、もう少し可愛しくなさったら?」


誰の意見をとっても正論なのはわかっている。私はただ、そうですね。わかりました。精進いたします。それしか言えなかった。……苦しかった。無理だと思うようなことも必死に頑張ってきた。それも……


「今日で……終わると、思ったのになぁ」


これからは今まで以上に辛い毎日が待っているのだと思うと、もういっそ消えてしまいたい。消えてしまえたら、お祖母様に会えるのだから。しかし、お祖母様が最期に私に残した言葉が引っかかる。


「レティが幸せになって、笑顔で終わりを迎えたら、私と会いましょうね」


そんな日、来るわけないのに。もう、どうすればいいのかわからない。どうすれば、幸せになれるのか。誰か教えて。


自分の今までの人生の全てを否定され、どう生きればいいのかわからない。そして、そのうち、息の吸い方がわからなくなり、まぶたが重くなる。


───もう、どうでもいいや。


私はそのまま気を失ってしまった。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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