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オイラはニート

世の中には三種類のニートがいる。

真面目なニートと、不良ニートだ。

オイラは真面目なニートに分類される。


もう十年もニートをやっている。

しかしそれは嘘で、実際は大学を中退してから働いていないから、十一年かニ年くらいになる。

人は働かなければならなくなったときに働く。

たいていのニートは元々働いていた奴だ。


それが何らかのきっかけで働けなくなり、ニートになる。

オイラから言わせれば、そのようなニートはニート失格、二流ニートである。

ニートは生まれてから一度も働いたことのない人間が得られる称号なのだ。


思えばオイラは孤独だった……。

中学時代は不登校、高校時代も不登校、大学時代も不登校で、そもそもなぜ進学したのかが謎なほどの学校嫌い。

当然友達はなく、また金も学もない。


あるものはといえば……なにもない。

強いて言うならば持たざる者の自覚がある。

オイラにはなにもない。

なにもないということをオイラは自覚している。


だからこそ奮起しようと思った。

ニートにはニートの生き方があると世間に知らしめるために命を捧げようと思った。

天啓が舞い降りたのだ。


いやはや、大口をたたいているけれども、本当のところオイラは小心者のニートである。

人は長い間孤独にさらされると、脳が退化し幼稚じみてくる。

子供が小さなことで腹を立てたり暴れたりするのは、自分の思うように事が運ばないからだ。


大人は最初から、物事が自分の思う通りにいかないことを知っている。

だから落ち着いていられる。

ニートは脳が退化しているから、落ち着いていられない。

まるで子供がかんしゃくを起こしたかのように暴れ、暴言を吐き、周囲に当たり散らす。

やがて呆れられ、元々少なかった友人、知人も離れていき本当の孤独がやってくる。


頼れる親もなく、親戚からも見放され、最後に残ったちっぽけなプライドで役所の手続きすら拒むニートは、もはや死ぬしかない。


オイラはそれが分かっていながら働かない。

むしろ上等だと思っている。

自堕落に生きた人間は自堕落に死ぬべきだ。


そういえば先週道を歩いていたら、オイラの横で車が止まった。

窓が開いて、中の男がオイラの名前を呼んだ。

誰だこいつとオイラは思った。

男の顔に見覚えはなかった。


ちょっと間があいて、ようやく男の顔を思い出した。

中学時代の同級生だった。

オイラは「おおっ」と声をかけた。

相手も「おおっ」と言った。


「俺仕事辞めたんだよね」と男は言った。

オイラは「へえ」と返事をした。

車はブーンと去っていった。


なんでそれを言った?

オイラは去っていく車を目で追いながら思った。

同級生のことだから、オイラがニートをやっていることを知っていたのだろう。

それで自分も仕事を辞めてニートになったから、オイラにシンパシーを感じて車を停め、ちょっとニート話でもしようかと声をかけたに違いない。


舐めるなよ、とオイラは拳を握りしめた。

オイラは生粋のニートだ。

昨日今日仕事を辞めた凡人とはわけが違う。


そいつは車に乗っていた。

オイラは免許を持っていない。

そいつには職歴がある。

オイラにはない。

天と地の差がある。


そいつはオイラよりイケメンで、オイラより運動神経がいい。

つい最近まで働いていたんだから頭も鈍ってないだろうし、貯金もあるだろう。

五千円もらうのに親父に土下座しているオイラとは格が違う。


月日が過ぎるのは早いもので、もう年末である。

この時期はいろいろと気まずい。

街に出れば知り合いと逢う確率が高くなる。


オイラには友達がいないから、知り合いの顔などいちいち覚えていない。

しかし向こうが覚えていて声をかけてくる。

今何をしているのかと尋ねてくる彼らは、オイラが何もしていないことを知っていて聞いてくる。

だから出歩かないようにしなければ。

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