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第二章☆謎の飛行物体
「ここは、not only but alsoを使って文を作る。そして・・・」
英語の朝課外の最中だった。教壇の松永先生の大声が響く中、美里は今日の夜の7時からTV放送される「世界忍者戦ジライヤ」のビデオ録画予約をちゃんとやってきたかどうかで頭を悩ませていた。主人公の山地闘破役の筒井巧さんが、松永先生とちょっと似ていて、気になる。美里の家はβのビデオなので、一般的なVHSのビデオと互換性がなくて困る。
「・・・で、緑!」
「は、はいっ」
「ちゃんと聞いてるか?」
えーと、と美里は内心とても焦っていたが、ふいに校庭の方で、ずしーんという地響きがした。
「?」
校庭では確か、サッカー部が朝練しているはずだった。
「なんだ?」
松永先生が教壇から窓に向かって歩く。教室がざわつく。
「誰だ、あんなところに掘っ立て小屋建てたのは」
銀縁眼鏡で目を凝らして校庭を見ていたが、自習を言い渡して、教室を出た。
わーと教室が騒がしくなって、2年B組の生徒はみんなテキストそっちのけで先生の後からわらわらと校庭に向かった。
野次馬が集まっていく中、美里が駆けつけると、2年A組の高橋一馬が先生たちに取り囲まれて質問責めにあっていた。
高橋一馬といえば、新入生テストで主要科目満点だったとか、古典と歴史が全くダメとか、変わり者という噂が美里の耳にも届いていた。
朝から自転車置き場で遭遇した時に「サイン、コサイン、タンジェント~」とはなうたを歌っていたっけ。
「うちの高校はバイク通学は禁止だぞ」
「あれは空中に浮くので、バイクではありません」
「飛行機なら論外だぞ!確か、17歳位からしかライセンスも取れない筈だし」
「俺は17歳で、ライセンスも取得しています」
「えっ、・・・でも飛行機か?これ」
「俺が造った乗り物です」
「は?」
全員目が点になった。
「10人乗っても大丈夫」
「・・・それ、何かのCMのパクリだろ?」
「はい」
悪びれず一馬は答えた。