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第34話 無口だと思ってた人から怒られるのは凄く怖いの巻

 俺たちの目の前に白髪銀眼の美少女が現れた。


 よく見ると、お尻のあたりに龍の尻尾が生えているのが見える。

 ということは、彼女も龍魔族の1人なんだろう。


「ヌルシーさんとフラミーさんが2人で私のところを訪れたということは……もしかして、私たちのグループに入りたくなったのですか?」

「いえ、そういうわけじゃないです。勘違いしないでほしいですね」

「あらあら……そうですか」

「それに、どうせグループに入っても、インちゃんは私を除け者にするからイヤなのです」

「おほほほほ……除け者にだなんてしませんよ……ヌルシーさんがちゃんと場の空気を読めばですけれど……」


 ふむ。

 どうやら、この子はヌルシーの知り合いのようだ。

 もしかして、彼女が例の天敵かな?


「それはそうとヌルシーさん。あなたは私より1つ年下なのですから、それ相応の敬意をもって私と喋りなさいな」

「たかだか10ヵ月ほど早く生まれたって程度の差じゃないですか。それくらいで先輩風を吹かせられても困るのです」

「……おほほほほ、相変わらず、あなたは礼儀というものをわかっていない様子ですね」


 なんというか……あんまり仲が良くないんだろうな。

 白い子は手に持っていた扇子で口元を隠しているけど、目の当たりがピクピクしている。

 ヌルシーもヌルシーで眉をひそめてるし。


「礼儀をわきまえるのはお前のほうだ、インフィー」

「お、お父様!?」

「この者らは儂の大事な客人だ。友人と喋るのもいいが、まずは自己紹介くらいするものだろう?」

「うぐ……」


 白龍王に窘められ、白い子は俺たちに向かって軽くお辞儀をしてきた。


「……失礼いたしました、お客人の皆様。私はルミエル・ドラゴネスの一人娘、インフィー・ドラゴネスと申します」


 やっぱり白龍王の娘さんでしたか。

 髪の色や目元がよく似ていらっしゃるから、そうじゃないかとは思っていたよ。


「ちょうどいい。インフィーよ、勇者一行を客人用の部屋に案内しろ」

「え? 勇者一行?」

「この者らのことだ。『無言の勇者』といえば、お前も知っているだろう?」

「え、ええ。存じてはおりますが……」


 インフィーと名乗る少女は俺を見た。

 多分、俺が『無言の勇者』であるとアタリをつけたんだろう。


 ゲームで『インフィー』という子と会った覚えはない。

 だから、おそらくはこれが俺とインフィーの初顔合わせになる。


「ああ……なるほど……ヌルシーさんの首輪は、つまりはそういうことですか……」


 インフィーは俺とヌルシーを交互に見ながら口元を扇子で隠した。


 なんか、俺たちの仲を誤解しているみたいだ。

 ここでガツンと言ってやっちゃいましょうかしら。

 『俺たちは奴隷とご主人様の関係じゃなく、妹とお兄ちゃんの関係なんだ!』って。


「……まあ、引きこもりがちなヌルシーさんにとっては、奴隷になるのも悪くないのではないですか? これを良い機会として、労働に励むことを学びなさいな」

「むっ」


 あ。

 ヌルシーの顔がムッとしだしたぞ。

 それはそれで可愛いもんだが、そろそろ2人を止めさせないとかな。


「こらっ、君。ウチのヌルシーをいじめるんじゃないっ」

「っ!?」


 俺が保護者口調(先生口調と言っても差し障りない)でインフィーを叱る。

 すると、彼女は物凄く驚いたというように、大きく肩を跳ねあげた。


「む、『無言の勇者』が喋った……?」


 驚いたのはインフィーだけじゃなかったようだ。

 白龍王はいつの間にか、数歩分足を後方に移動させていた。


「しゃ、喋ることもできたのか……」

「ヌルシーに危害を向けられたとき、契約によって無言の勇者の言葉は解き放たれるのだ……」

「な……そんなことが……?」


 まあ、嘘だけど。

 今のはただの出まかせです、ハイ。


 にしても、俺が喋ることのインパクトは、たとえ白龍王相手でも相当デカいみたいだな。


「……アルト」


 背後からイーナの視線が突き刺さってくるのを感じる。


 いやいや。

 あの場合は喋らないとでしょ。

 俺、一応ヌルシーの保護者ってことになってるんだから。


 それとも、この場合は黙ってたほうがよかったのかね。

 子ども同士のいさかいに保護者が積極的に介入するのは、よく考えてみるとよろしくないし。

 場合によってはモンスターペアレント認定されてしまいかねないしね。

 難しい話だなぁ。


「ま、まあよい…………インフィーが粗相をした。これは、私のしつけがなってない証拠だ」


 と思っていたら、白龍王は俺とヌルシ―に向かって深く頭を下げてきた。


 これは別に白龍王さんが悪いわけじゃないんだけどね。

 律儀な人だ。


 あえて誰が悪いのか決めるとするなら、それは俺か、このインフィー――。


「……って」

「ぐすっ……ひっぐ……」


 インフィーが泣いてた。

 涙目で頬を赤くし、鼻をすするようにして泣いていた。


 えっ。

 これ、俺が泣かせちゃった?


 うわー……。

 俺、こういうとき、どうすればいいのか全然わかんないよ……。


「あの――」

「びえええええええええええええええええぇぇぇん!!!!!」

「!?」


 俺が声をかけようとすると、インフィーは号泣し始めた。


 やっぱり俺が泣かせたんじゃないか!

 駄目でしょ!

 女の子には優しくがモットーでしょうが、俺!


「泣くな、インフィーよ。客人の前だぞ」


 そして、そんなインフィーに白龍王が一声かけた。


「っ…………ひっく…………うぅ…………はい、お父様…………皆様……お見苦しいところをお見せしました…………お部屋に案内します……」


 すると、彼女は涙が溜まった目元を袖でゴシゴシと拭い、ビクビクしながら俺たちを先導して歩き出した。


 なんか、悪いことしちゃったな。

 泣かせるつもりなんてなかったのに。

 そりゃあ、小学生か中学生くらいの女の子が大人の男に叱られたら怖がっちゃうよね。


「お兄ちゃんが気に病むことはないのです」

「……ヌルシー?」

「あれは、私を庇ってくれたんですよね? だったら、インちゃんを泣かせてしまったのは私のせいです」


 ああ……ヌルシーは優しいなぁ……。

 俺が落ち込んでるのを見て、そんな言葉をかけてくれるなんて……。


「それに、インちゃんにはいつもイジワルされてますから、今日はスッキリしたのです」


 ……何気に黒い部分もお持ちなんですね、ヌルシーさん。

 お兄ちゃん、ちょっぴりビックリしてしまいましたわよ?


「なにしてんのよ、アルト。早く行くわよ」


 おっと。

 いつまでも突っ立ったままじゃ白龍王さんに迷惑だよね。


「行きましょう、お兄ちゃん。インちゃんを待たせて、また怒りでもされたら面倒です」


 ヌルシ―さん、相当インフィーさんと確執がある模様ですね。

 言葉にトゲがありますことよ?


「どうかしたんですか」

「んーん、なんでも。それじゃ行こっか、ヌルシー」

「はい」


 さてさて。

 それでは、本日泊めさせてもらえるお部屋へと行きましょうかねぇ。

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