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第33話 いざ、ホワイトマウンテンへ!

 俺たちはノワール教団から情報を引き出し、暗黒神が封印されているという雪山『ホワイトマウンテン』へと足を運んだ。


 ここまでの道程は、いつもの通り『ワープ』で一瞬だった。

 旅の情緒もへったくれもなくて、ちょっとつまらない。

 今度、フィールかスコールに乗って自由気ままな異世界旅行でもしてみようかしらん。


 とまあ、それは脇に置いといて、今はこの雪山についてだ。

 雪化粧によって美しくそびえ立つこの山には、四龍王の1人である白龍王が住んでいる。


 山全体には結界魔法がかけられているから、許可がない者は『ワープ』で結界内部に入ることができない。

 また、本格的に山の中を探索しようとするなら、ここら一帯をナワバリとする白龍王の承諾がいる。


 というわけで、俺たちは白龍王のもとを目指して登山を開始した。


「うぅ……」

「ん? どうしたヌルシー。もう疲れちゃったか?」


 俺たちと一緒についてきたヌルシーが眉をひそめている。

 疲れているというのなら、俺がおぶってあげるんだけど、はたしてどうか。


「この先には、私の天敵がいるのです……」

「へ? 天敵?」


 ヌルシーの天敵って、いったんなんだろうか。

 人参とかピーマンとかかな?


「ああ……あの子ですわね……」

「あの子?」


 どうやら野菜とかではないようだ。


 あの子って言うからには、人の姿をしているなにかだろう。

 ヌルシーの天敵なるものは、はたしてどのような人物か。


「それはそうとお兄ちゃん。そろそろ私の足は乳酸菌地獄でガタガタなのですが」


 と思っていたら、虚弱なヌルシーはそう言って、俺にヘルプを求めてきた。


 最初に訊いたほうも当たりだったのか。

 しょうがないなぁヌルシーは。


 よし!

 ここは俺が彼女をおぶってあげよう!


 と思ってた矢先――。


「おぉっ、スラ様が運んでくれるのですか」

「スライムのクセに、なかなか気が利きますわね」


 俺の袖口からスラ様が出てきて、ヌルシーを自分の体の上に乗せた。

 ヌルシーはフカフカのソファーに座っているかのように、居心地良さそうにしている。


 ここは俺がおんぶする場面じゃないのか。

 いやまあ、スラ様は気が利いてグッジョブなんだけどさ。


「……なんであんた、そんなガッカリしてそうな顔してんのよ」


 イーナが俺にジト目を向けている。


「男の子はいつだって女の子に頼られたいものなの」

「そういうもんかしらね……」


 そういうもんなのよ。

 俺、ヌルシーに頼られたら、なんだってできるような気がする。


「もちろん、俺はイーナに頼られてもはりきっちゃうよ」

「……ふーん、あっそ。まあ、アタシがあんたを頼る機会なんてそうそうないと思うけど? もしもそんなときがきたら遠慮なく頼らせてもらうわ」


 ふっ。

 このツンデレさんめ。

 素直に嬉しいって言っちゃいなよ、you。


「……勇者」

「ん? どうした、クレア」

「……私も、勇者に頼ってもいいか?」

「え、あ、ああ! もちろん! どんどん頼りなさいな!」


 ここでクレアを除け者にするような発言はできんわな。

 蜥蜴族(リザードマン)といえど、彼女もれっきとしたレディーなのだから、


「……では……さっそく頼らせてくれ」

「ちょ!? え、クレアさん!?」


 クレアが突然俺に抱きついてきた!


 な、なにするんですか!

 ちょ、や、やめてくださいっ!

 大声出しますよっ!

 人呼びますよっ!


「……って、あら?」


 クレアの体は冷え込んでいて、ガタガタと震えていた。


「あー……そういえば、クレアって寒いところが苦手だったわね……」


 そうなのか。

 やっぱり爬虫類の特性みたいなのを蜥蜴族(リザードマン)も持ってるってことかね。

 多分、体温調節とかが苦手なんだろう。


「そういうことならしょうがない……おんぶしてあげるから、クレアは休んでなさい」

「……面目(めんぼく)ない」


 しおらしくシュンとするクレアに萌えを感じつつ(そう思わないとやってられない)、俺はみんなと一緒に雪山をのしのしと歩いていった。






「ほう……勇者一行が再び儂のもとを訪れるとはな……」


 俺たちは雪山を登り、龍魔族が住む町にたどり着いた。

 そして、そこの町長的立場である白龍王、ルミエル・ドラゴネスの屋敷にやってきた。


「貴様たちが以前ここを訪れたのは……そう……つい半年ほど前だったか……」


 ゲームでの話だが、俺は白龍王に一度だけ会ったことがある。

 魔王城の結界を解くための宝玉の1つを貰うためにだ。

 なので、白龍王からしたら、俺たちは初対面ではない。


「その通りですな。何度も厄介になってしまい、申し訳ない」


 俺たちを代表して、イーダが白龍王に軽く頭を下げた。


「よい……こんな辺境の土地まで足を運ぶ者は貴重だ。ゆっくりしていくといい」


 案外優しそうな人だ。

 見た目は白い長髪の大男で結構な威圧感があるんだけど、話してみると案外物腰が柔らかい。


「それに……貴様たちはあのルシフェルを倒したのだろう? であれば、儂が貴様たちをぞんざいに扱うはずもない」


 ……と思っていたけど、この対応の理由には大魔王討伐が絡んでいるみたいだ。


 ヌルシーの親父さん、四龍王から嫌われすぎてやいませんかね。

 赤龍王からも良く思われてないみたいだけど。

 いったいなにをしたのよ。


「まあ、ルシフェルの忘れ形見が勇者一行に混ざっているとは思わなんだが、子に関しては儂も悪くは思っておら…………んん!? そ、そのドラゴンは……!?」


 白龍王は突然、俺の肩に乗っているルッシーを見て驚いたというような表情をしだした。


 あら。

 おわかりになっちゃいます?

 流石は白龍王。

 見る目が違いますわ。


「この子はルッシーです」

「る、ルッシー?」

「そです。ルッシーです」

「そ、そうか……いや、なんだ……一瞬、見覚えのある男を幻視してしまってな……今のは忘れてくれ……」


 どうやら、白龍王はヌルシーの説明を受けて、見間違いだと思うことにしたようだ。


 見覚えのある男もなにも、そのドラゴン、今話題に出してた黒龍王さんの生まれ変わりなんですけどね。

 わざわざそんなことを言う気はないけど、ちょっぴり俺もドキッとしちゃったよ。


「ま、まあ……とりあえず、貴様たちが向かうという『毒の大地』へは、また明日にするとよいだろう。今日は我が家で泊まっていくといい」


 『毒の大地』とは、俺たちがノワール教団から聞きだした暗黒神の封印された土地の名称だ。

 話によると、その土地はここの山の奥にあるらしい。

 何気に、そこは俺にとっても知らない場所だ。

 はてさて、どんなところなのやら。


「……それと、ここへの移動は徒歩であったのだろう? 次からは『ワープ』で移動できるよう許可を出しておくゆえ、後でいくばくかの魔力を貰うぞ」

「お心遣い、痛み入りますじゃ」


 そういうこともできるんだね。

 だったら最初来たときにしてくれればよかったのに。


 って、そんなことを思っちゃうのは単なるワガママかね。

 俺たちが黒龍王を倒したからこそ、白龍王は特別にこの町への直接ワープを許可してくれたって見方もできるしね。


「おほほほほ。そこにいるのは、もしかしてヌルシーさんとフラミーさんじゃありませんか?」

「!」


 そんなこんなをして、俺たちが白龍王のもとを去ろうとした、そのとき。

 何者かが背後からヌルシーとフラミーに声をかけてきた。


「その声は……インちゃんですね……」


 ヌルシーが呟きながら後ろを振り返る。

 それにつられて、俺も彼女の視線の先にいた人物のほうへと目を向けた。


「……インちゃんではありません。私のことは、『インフィーさん』とお呼びなさいと、何度も言っているでしょう?」



 ヌルシーたちに声をかけてきたのは……ちょうど彼女たちと同い年くらいの背格好な、白髪銀眼の美少女だった。

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