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第19話 スラ様がいれば暴漢対策もバッチリです

 フィールに乗って空の飛行を十分満喫した俺たちは、またスタート王国に戻ってきた。


 想像通り、モンスター牧場は良いところだったな。

 これからはちょくちょく顔を出すことにしよう。


「……ん? なんか……変な人がこっちきてますの」

「変な人?」


 街に戻って早々、フラミーが変な顔をしだした。

 なので、俺は彼女の視線の先へと顔を向ける。


 ……裸の男が俺たち目がけて走ってきていた。


「ゆ、勇者のダンナァ! 助け――」

「ウチの子に変なもん見せんなああああぁぁぁぁ!」

「おわあああああああああああああああああああああああ!?」


 とりあえず、俺は男を地面の上に組み伏せた。


 ぶん殴ろうかとも一瞬思った。

 けど、それをすると殺人になりかねないので、ここは控えめだ。

 とはいえ、ヌルシーたちの目を汚した罪は重い!


「砂の味は美味いか! この露出狂め!」

「ち、ちがっ、俺は露出狂じゃないですって!」

「じゃあ、いったいなんだっていうんだ! このストリーキングめ!」


 一応、パンツだけは穿いているものの、それ以外はなにも身に着けていない。

 こんな状態の男が外を走っていたら、変質者として捕まっても文句は言えないだろう。


「……あれ? アンタ、昨日会ったチンピラじゃん」


 ふと、俺はそこで、この男の顔に見覚えがあることに気づいた。

 まあ、それはつい昨日会ったことがあるからなんだが。


「ダンナ……思い出すのが遅いっすよ……」


 いやぁ、忘れたままでも良かったってカンジなんですけどね。


「その人、アルトさんの知り合いですの……?」

「知り合いってほどでもないけどね」


 向こうから一方的に突っかかってきて土下座して街の案内を買って出た三下、という印象しかない。

 あ、でもヌルシーに石を投げたことは絶対に忘れないぞ。


「それで、なんでアンタは俺たちに向かって走ってきたんだ? 俺、男の裸には興味ないぞ?」


 こんな熱烈アプローチをされても、俺には警察を呼ぶことしかできそうにない。

 俺の趣味は、いたってノーマルなのだから。


「俺も男色の気はないっすよ……」

「じゃあ、なにが目的だ」

「それは……ダンナに俺の仇を討ってほしいと思いやして……」

「仇?」


 チンピラは体についた土ぼこりを手で払いながら、俺たちに説明を開始した。


「昨日、近々ポーカーの大会があるって言ったじゃないっすか。それは今日だったんすよ」

「ほうほう、それで?」

「もちろん、俺もダンナから貰った金貨を使って、その大会に参加したんすよ。でも……そこで滅茶苦茶強い奴に当たっちまいやして……」

「……有り金と着ている服を全部巻き上げられた……と?」

「その通りっす」


 うわー……。

 なんか、絵に描いたような駄目人間だー……。


 普通、そんなになるまで賭けたりしないだろうに。

 でも、それはあくまで自己責任だ。

 俺には関係ない。


「ふーん、大変だねー、それじゃあ、俺たちはこの辺で――」

「ま、待ってくだせえダンナァ! 俺を見捨てないでくだせえ!」

「うるせええええええええ! 俺に触んなああああああああああ!」


 俺は助けないぞ!

 女の子だったら絶対助けるけど、裸の男を助ける気なんて一切ないぞ!

 あんま俺を見くびるなよ!


「……あ」


 と思ってチンピラの手を振り払おうとした、そのとき。

 俺の服の袖から水色の流動体が飛び出し、チンピラにまとわりついた。


「いででででででででででぇ!?」


 チンピラは俺のモンスターであるスラ様に襲われて、物凄く痛がっている。

 モンスター牧場からスラ様だけは連れてきてたけど、まさかこんなことをするだなんて……!


「こら! やめなさい!」

「ダンナァ……」

「そんな汚いものを食べたらお腹壊しますよ! ペッしなさい! ペッ!」

「ダンナアアアアァァァァッ!!!」


 さっきからうるさいな。

 ヌルシーたちにいつまでも男の裸体なんて見せたくないから、そろそろお引き取り願いたいのに。


「お兄ちゃん」


 スラ様が俺の足元にぽよんぽよんと戻ってくるなか、ヌルシーが声をかけてきた。


 彼女は昨日の一件以来、俺のことを律儀に『お兄ちゃん』と呼んでくれる。

 こんな可愛い子にお兄ちゃんと呼ばれるなんて最高だな!


「ん? なんだいマイフェイバリットシスターよ」

「ポーカーってなんです?」

「あれ、ヌルシーはポーカー知らないの?」

「知らないです」

「あら」


 チンピラはポーカーを知っている様子だ。

 だから、この世界にもそういうゲームがあるのだとは思うんだけど、知らない子もいるのか。


 ヌルシーはインドア派っぽく見える。

 こういうカードゲームは知っているかと思ったんだけどなぁ。


「フラミーもポーカー知らないの?」

「私はヌルシーと違って、ちゃんと知ってますの」

「なんですラミちゃん。もしかして、私を馬鹿にしたいのです? だとしたら、私とラミちゃんの仲もこれまでになりますね」

「そ、そういうわけじゃありませんわよ!? なんでいきなり絶交されかかってるんですの!?」


 どうやら、フラミーのほうは知ってるようだ。

 そのことに対してヌルシーのご機嫌がちょっぴりナナメになったようだが、それも可愛らしくて大変グッドである。


「んじゃあ、そのポーカー大会の見物でもしにいくか?」

「うーん……私は別に見たいわけじゃ――」

「た、大会は昨日案内した酒場で行われてやすぜ……ダンナ……」

「――ないこともないです。うん、行きましょう」

「今、なんで考えを改めたんですの?」


 どうやら、ヌルシーは大会を見に行きたい様子だ。

 それなら俺も、連れて行くことを躊躇わない。


「よし、そんじゃレイダの酒場へ行ってみよー」

「れっつごーです。あっ、それと、そろそろお昼の時間ですね。ついでに食事もそこで済ませましょう」

「た、大会を見に行きたいんですのよね? ヌルシーは?」

「そうですよ? ラミちゃんはなにを言っているのですか。あっ、あと食後にデザートも付くとなお嬉しいです」

「やっぱり本題がズレてませんこと!?」

「あんまり細かいことは気にしちゃ駄目です。絶交されたいんですか?」

「だから、なんでいちいち絶交されかかってるんですの!?」


 こうして俺たちは、昨日案内されたレイダの酒場へと向かった。


 そこでは、チンピラの男が言っていた通り、大会に出場しているギャンブラーたちで埋め尽くされていた。

次回

VS一流のギャンブラー

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