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第18話 モンスター牧場 ~ドラゴンVSスライム~

5月8日投稿2回目。

 王宮で朝食を済ました俺は、ヌルシーとフラミーを連れて、とある牧場にやってきた。


 『ワープ』を使って移動したから、午前中に来れた。

 魔法様々だな。

 今度、攻撃魔法のほうも使えるか確認しとこう。


「ここがモンスター牧場ですのね」

「広いですね。パパのお城くらいありそうです」

「まあ、モンスターを飼っているところだからね」


 どこまでも続く大草原の中にある放牧場。

 俺は、そんな放牧場にあった一軒の大きな建物のほうへと歩いていく。


「あれ? もしかして君、勇者様?」


 すると、その建物の近くで牛の乳搾りをしていた少女に声をかけられた。


「ああ、そうだけど?」

「!?」

「あーいいから、驚かなくても別にいいから」


 少女は目を大きく見開いて、口をあんぐり開けている。


「俺は勇者だけど普通に喋れる、オーケー?」

「お、おーけー……」

「よし、ならいい」


 もう、俺が喋ったことで驚かれるこのパターンにも慣れた。


 しっかし……この子は俺を見ただけで勇者と看破したな。

 なら多分、俺がゲームをやっているときにできた知人なんだろう。


 そう思いつつ、俺は彼女の名前を知るため、イーナからの忠告を無視して『サーチ』をかけてみる。



 ソル・ファーランド ♀


 身体能力 452

 魔法能力 128



 なるほど、ソルか。


 ソルだったのか。


 …………。


「えっと……ソルで合ってるよな?」

「え……もしかして、ボクの顔、忘れちゃった?」

「いやまあ……久しぶりに来た気がするからな。ソルも見違えるほど綺麗に成長したなーって」

「ばっ!? ばっかじゃないの!? ボクはそんな……綺麗とかには無縁だし!」


 冗談交じりに名前を訊ねると、ソルは顔を真っ赤にして手をワタワタさせた。


 見違えたというのは、あながち間違いでもないんだよな。

 ドット絵ではわからなかったけど、ソルって女の子だったのか。

 一人称がボクで名前も男っぽかったから勘違いしてた。

 でも、どこぞのリザードマンより嬉しい勘違いだ。


 ソルの顔には農作業をしたからか泥がついているが、それでもなかなか可愛い容姿であることが一目でわかる。

 髪はショートカットで、活発そうな雰囲気のボーイッシュな少女だ。


 しかも……胸に実った果実の大きさが桁違いで、作業着の中から凄い谷間が見える。


 まあ、なんだ。

 乳搾りしたい。


「乳搾りしたい」

「してもいいよ。乳搾り」

「マジで!?」


 つい口を滑らせた俺の発言を、ソルは軽く了承してきた。


「うん。でも優しくしてね」

「しますします優しくします。優しく揉みしだかせていただきます」

「揉み? まあいいや、それじゃあこっちに来て」


 ソルはそう言うと俺の手をとって……牛の傍に座らせた。


「まあ……こういうオチだよねー……」

「なんか言った? 勇者様?」

「いや、なんでも。わー乳搾り楽しいなー」


 そして俺は、目の前にいる牛の乳に手を触れて、搾乳を開始した。


 俺が右手に優しく力を入れると、白い液体がビュッと飛び出る。

 やだ、卑猥。


「それで、今日はどんなご用件でこんな辺境の地へ?」

「おお、そうだった。こんなことをするために来たんじゃなかった」


 ソルが疑問の声を上げるのを聞き、俺は乳絞りの作業を中断させて立ち上がった。


「なあソル、俺の預けているモンスターは元気か?」

「あ、フィールちゃんとスコール君、それにスラ様のことだよね? うん、元気にしてるよ」

「そっかそっか。んじゃ、ちょっと連れてきてくれ」

「うん、いいよ」


 俺が頼むと、ソルは建物の中に入っていった。

 そして数分後、俺たちの目の前には3匹のモンスターが並んだ。


「かっこいい……」

「これは……古代種ですわね?」

「おお、わかるのか」


 フラミーが『古代種』と言ったのに対し、俺は素直に驚いた。


 確かに、フィールとスコールは古代種だ。


 純白で上半身が大鷲、下半身はライオンという、エンシェントグリフォンのフィール。

 漆黒の体毛で身を包んだ巨狼、エンシェントウルフのスコール。

 闘技場で猛威を振るった様子からして、どちらモンスターとしては最強の部類に入るはずだ。


 というか、見た目凄いカッコいいな。

 ドット絵からカッコいいと思っていたけど、実際に見てみると迫力が違う。


 俺はその2匹に『サーチ』をかけてみる。



 フィール ♀


 身体能力 116100

 魔法能力 124012



 スコール ♂


 身体能力 121521

 魔法能力  91890



 強いな。

 数字的に見ても、敵いそうなのがクレアたちくらいしかいない。

 もしかしたら、この2匹だけでスタート国を滅ぼせるレベルなんじゃないか?


「……それで、このチンケなスライムはなんですの?」

「チンケ言うな。こいつは俺のエースモンスター様であらせられるぞ」


 わりと失礼なことを言い放つフラミーに、俺はムッとしながら言い返す。

 そして、目の前にいる水色の流動体にも『サーチ』をかけた。



 スラ様 ♀


 身体能力 132958

 魔法能力 158201



 うん。

 やっぱりこいつが一番強い。

 このスラ様は、そんじょそこらのモンスターとは訳が違う。

 最弱が最強になるまで鍛え上げた俺の最高傑作に文句なんて言わせない。


 最強にして究極のスライム。

 だから、敬意をもって『スラ様』と名付けた。


「これがエースモンスター? あっちの古代種のほうがずっと強そうですわよ?」

「これとか言うな。スラ様とお呼びしろ」

「なんでスライムに様付け……」


 フラミーはスラ様の実力を過小評価しているみたいだな。

 畏れ多いお子様だ。


「弱いと思うなら、スラ様と戦ってみるといい。ここはスタート国じゃないから、龍化してもいいぞ」

「わかりましたわ」


 フラミーは俺の挑発に軽く答え、ドラゴンの姿に変身した。

 それを見た俺は、ドラゴン姿のフラミーにも『サーチ』をかけてみる。



 フラミー・ドラゴネス ♀


 身体能力 89409

 魔法能力  753



 やっぱり、龍化した状態としない状態では身体能力に変化があるのか。

 『サーチ』の数字も完全には信用ならないということで確定だな。

 フ○ーザ様みたいに『あと2回の変身を残しています』とかいう奴が出てこないとも限らない。


 ただまあ、フラミーの変身は、これで最終のようだ。


「ぎゃー!」


 赤いドラゴンと化したフラミーは、スラ様が放つ炎獄魔法『インフェルノ』を食らって丸焦げにされていた。


 ドラゴンにスライムが勝つとか、シュールだな。

 でも、これでフラミーよりスラ様のほうが強いということが証明された。


「大丈夫か?」

「くぅ……ほ、誇り高きドラゴネスの私が……こんなスライム如きに……」


 フラミーは人間形態に戻って、シクシク涙を流していた。

 どうやら、スライムに負けたことが、よほどショックだったようだ。


「だから言っただろ。こいつが俺のエースモンスターだって」


 スラ様のほうへ目を向ける。

 すると、スラ様はぷるんと1回震えて、その視線に答えた。


「クルルゥ」

「グルグル」

「お?」


 と、俺がスラ様に目を向けていると、フィールとスコールが擦り寄ってきた。


 もしかして、構ってほしいのだろうか。

 そう思った俺は、フィールとスコールの喉元を撫でてみる。


「クルゥ……」

「……グル」

「おぉ、愛い奴らめ」


 2匹は気持ちが良さそうな鳴き声を上げ、目を細めた。

 凄いデカくて威圧感があるけど、この様子だと、なかなか人懐っこそうだな。


「流石勇者様だね。その子たち、なかなかボクに懐いてくれないのに……」

「そうなのか」

「うん……」


 ソルはシュンとしながら俺たちを眺めていた。


「おっ、お前もか、スラ様」


 と、そんなとき、俺の足元にスラ様がぬるぬるやってきて、体に纏わりついてきた。


「だ、大丈夫なんですの……?」

「なにが?」

「そのスライム、結構強かったですわよ……? そんなものを体に纏わせたら、食べられてしまうのではなくて……?」

「食べるのか?」


 俺は肩まで登ってきたスラ様に向けて問いかける。

 すると、スラ様は体をぷるぷるっと2回振動させて否定してきた。


「食べないってさ」

「そんなので本当に意思疎通できてますの?」

「できてるんじゃない?」


 まあ、なんとなくだけど。


「……と、そうだ。フィール。ちょっとこっちおいで」

「クルゥ?」


 俺はここにきた目的を思い出して、フィールを引き寄せた。

 そして、フィールの背中に飛び乗って、ヌルシーとフラミーに声をかける。


「ヌルシーとフラミーも、空の散歩としゃれこまないか?」

「空のお散歩? そんなことは、私たちドラゴネスなら普通にできますから結構――」

「私も乗りたいです」

「えっ、ちょ……わ、わかりましたわ、たまには自分の翼で飛ばずに飛ぶというのも一興ですものね」


 ヌルシーが即決したのに対し、フラミーはなんかぐだぐだ言って、フィールに乗ることを決めていた。


「素直に俺たちと一緒にいたいって言えばいいのに」

「わ、私はヌルシーと一緒にいたいのであって、あなたといたいわけじゃありませんわよー!」


 やっぱり、フラミーはからかいがいがあるな。


 俺はフッと笑いながらもヌルシーとフラミーを招きいれ、フィールに命令を下した。


「よし、飛べ! フィール!」

「クルウ!」


 フィールは翼を広げ、大きく羽ばたかせて空へと舞い上がる。


「おお……すごいなぁ……」


 わずか数秒で空高く飛んだ。

 そんなフィールの背に乗る俺は、そこから見える風景に感嘆の声を上げる。


 俺の目の前に広がる風景。

 それは、遥か先まで続く緑の草原と、遠くに見える山脈、それにどこまでも続く青い空という絶景であった。


「おぉ……これは楽チンですね……それにモフモフしてます……私も移動用に1匹欲しいです」


 ヌルシーが目をキラキラ輝かせながら、フィールの羽毛に顔をスリスリしている。

 フィールのことがだいぶ気に入ったみたいだな。


「ちょっとアルトさん! そっち、もうちょっと詰めてほしいですの! ヌルシーとくっつきすぎですわー!」


 対するフラミーは、なんかどうでもいいようなことにプンプン怒っていた。


 フィールの背中は広いけど、さすがに3人で乗るのはキツかったかな。 

 まあ、それもまた悪くない。

 ご愛嬌ご愛嬌。


 そんなこんなで、俺たちはフィールによる空のドライブを満喫した。

 やっぱり、牧場に来てみて正解だったなぁ。

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