第15話 自爆する王女様
5月6日投稿2回目。
俺たちに毒を盛ろうとした大臣は、クレアたちによってスマキにされた。
そして、イーダによる誘導のもと、牢屋へと連行された。
これで一件落着だな。
なんか途中で父と子の心温まる和解シーンがあったりしたけど、それは気にしない。
「勇者には、また救われてしまったな」
涙を拭ったアレスティアが声をかけてきた。
救ったって、王様との関係のことか?
それなら、別に救ったってほどのことじゃない。
俺は薬を渡しただけなんだから。
「親父さんと仲直りできてよかったね」
イーダたちからは『できるだけ喋るな』って言われてるけど、これくらいは言ってもいいだろう。
さっきもうっかり喋っちゃったし、王様とアレスティアの前ではこれまででも結構喋ってるしね。
「ゆ、勇者……貴公にそんなことを言われてしまっては……涙が止まらぬではないか……!」
と思っていたら、アレスティアは再び瞳に涙を浮かばせだした。
いやまあ、本当に仲直りできてよかったんだろうけど。
二度も泣くことはないでしょうに。
「……ふぅ……失礼。しかし、一応訂正しておくが、余と父上は、別に仲違いをしていたわけではないのだぞ」
ありゃ、そうなの?
確執みたいなのがあるのかと思ってた。
ないならないに越したことはないから、別にいいんだが。
「でも、これでアレスティアは女の子らしく振る舞えるな」
さっきまでの話を聞く限りでは、アレスティアは王を継ぐ者として、あえて男らしく振る舞っていたようだ。
でも、王様は無理に男を演じなくていいと言った。
だったら、彼女はこれから女の子らしく振る舞っていいってことになる。
「いや、この口調も振る舞いも、すでに余の一部として定着している。積極的に変える気にはならぬな」
あ、あれ、そうなんだ。
それじゃあ王様の言ったことはなんだったんだってばよ。
「せっかくの美少女なんだから、もっと女の子っぽい格好とかすればいいのに」
ちょっともったいないなと思った俺は、アレスティアに向けて、そんなことを呟いた。
「び、美少女!? 余がか!?」
「え? あ、うん。そうだけど?」
「!!!」
すると、アレスティアは頬を真っ赤に染めて俯きだした。
結構ウブな反応するんだな。
容姿を褒められることなんて、王族なんだからよくあることだろうと思うのに。
「……そうやっておだてると……本気にしてしまうぞ?」
「と言っても、事実は事実だし……」
「!!!!!」
俺の返答に、アレスティアはますます顔を赤くした。
「よ、余を可愛いなどと評した者は、貴公が初めてだぞ……」
あれ、そうなんだ……。
もしかして、王族に対して『可愛い』だなんて言うのは不敬だったりするのかな……?
「だが、悪くない……むしろ……もっと言ってほしい……」
「え……なんだって?」
「い、いや! 余は別に、もっと可愛いと言ってほしいと思っただけで…………ってぇ!?」
アレスティアが突然、手をブンブンと振ってアタフタし始めた。
「こ、これは違わないぞ! 私は可愛いとか言われたいだなんて、全然思ってるから! ああぁぁぅっ!?」
「…………」
……これ、『ショージキポーション』のせいで、思ってることと言いたいことが混ざっちゃってる?
多分、アレスティアは『可愛い』と褒められたいけど『全然そんなこと思ってないんだからね!』ってツンデレしたい心境なんだろう。
やーだー。
カーワーイーイー。
「なんだ、アレスティアも立派な女子というわけか」
「ちょっと意外だわ……でも、悪くないと思うわよ、ティア」
王様とイーナがニヤニヤしている。
「…………っ!」
それを見て、アレスティアはさらに顔を赤くしている。
耳まで真っ赤で、ゆでだこ状態だ。
「可愛いよ、アレスティア」
なので、俺はキメ顔で彼女に囁いた。
だってね。
可愛い女の子が恥ずかしがってたら、追撃したくなるのが男の子ですしね?
案の定、効果覿面ですしね?
めっちゃ目を見開いてますしね?
「くぅ…………こ、ここまで辱められたのは、生まれて初めてだ……」
羞恥心によってか、アレスティアは全身をプルプル震わせている。
ちょっとイジワルしすぎちゃったかな。
でも、それはこの子が可愛すぎるからいけないんだっ。
だから僕は無実です検事さん!
「もっと言っていいかな……アレスティア可愛いって、さ……」
今度は流し目をしながら訊ねてみた。
すると、アレスティアは目を回しながらフラフラとしだした。
ヤバい。
凄まじく楽しい。
一言で表すとしたらヤバ楽しい。
アレスティアの反応マジヤバ楽しい。
「よ……余は…………勇者になら可愛いって言われても……」
「……え、俺?」
「!!!!!」
なにかを言いかけたアレスティアは、そこで口を両手で覆った。
そして、それを取り繕おうとしてか、すぐさま再び口を開いた。
「ち、違わないのだ! 余は、勇者に可愛いと言われて喜んでいるだなんてこと、全然あるのだ! …………ひああああああふぁぁぁあああああああぁぁぁっ!?!?!?」
「……ちょっ」
アレスティアは顔を両手で隠しながら……部屋の出口へと勢いよく走っていった。
いじりすぎてしまったようだ……。
なんか、可愛いって言われて喜んでるっぽかったけど、逃げられちゃったら駄目だよね。
自重はしないが反省しよう。
「……はっ!? こ、これは……アレスティアが勇者を……!?」
王様の様子もおかしくなった。
アレスティアが逃げた扉のほうを見ながら、なにかを考える素振りをしている。
「悪くない……いや、むしろ国にとっても良いことなのではないか……? アレスティアも乗り気であるなら……」
「あのー……すみませーん……」
「こうしてはいられん! 早速アレスティアに相談せねば!」
「お、王様ー……?」
王様は俺たちを置いて、急いで部屋から出て行った。
……なんだったんだろう。
王族には、退室するときは急がなくてはならないみたいな掟でもあるのかな。
まあいっか。
別に、大した理由じゃないだろう。
少なくとも、アレスティアがいつのまにか俺に惚れていて、王様のほうも割とまんざらではないというような状況ではないはずだ。
2人の反応的に、そんな馬鹿げたことを考えてしまったが、まずありえない。
だって、俺にアレスティアから好かれる要素なんてないし。
「ふっ、可愛いと言われたいだなんて、この国のお姫様もまだまだ子どもです」
アレスティアが走り去ったあとを見て、ヌルシーがヤレヤレといったふうに首を振っている。
僕はそんなヌルシーが一番可愛いと思います、まる。
「ま、とりあえずこれで一件落着だな。それじゃあ、俺たちは食事の続きでもしてよう」
「そうですわね。でも、せっかくの料理が冷めてしまいましたわ……」
こうして俺たちは、毒が入ってない分の食事を食べた。
宮廷料理は冷めても美味しかった。
そんなこんなで、俺の異世界生活1日目は終了した。
いろいろな出来事があって、長かったようで短かったような、そんな久しぶりに充実した1日だった。
でも、出来事の多さでいったら、2日目も半端なかった。
第1章、完!
続きまして明日から2章に入ります。
よろしくお願いいたします!




