第13話 VS大臣 ~勇者には(道具の力で)全部まるっとお見通しだ!~
俺たちの食事に毒が盛られていた。
その一件の犯人を突きとめるため、俺たちは王様にお願いして、とある1人の大臣を呼び出してもらった。
「ゆ、勇者よ……貴公らの願い通り、ヴェルディナンド卿を呼んだが……」
王様も、かなり狼狽しているようだ。
俺のほうに視線を向けながら、額から大粒の汗が垂れている。
無理もない。
城の中に毒殺を企てようとした不届き者が潜伏しているかもしれないんだからな。
今回は俺たちが狙われたようだが、立場的に、王様も他人事のようには思えないだろう。
だから、その汗は俺にビビって流しているわけではないはずだ。
うん、きっとそうだ。
とまあ、そんなこんなで呼び出してもらったのが、王様の側近であるというこの男だ。
俺も一度、謁見の間で見たことがある顔だな。
ヌルシーを見て『見た目に騙されるな』とか言ってた人だ。
「いきなり私を呼び出すとは……いったい何事ですかな、勇者殿」
王様が連れてきた大臣が訊ねてきた。
こっちの男も、冷や汗めいたものが顔から流れている。
何事もなにもない。
よくも毒を盛ったな!
この腹黒大臣さんめ!
「とりあえず、これを飲みなさい!」
「は? いや、え、な、なんですがそれはガボガボガボッ!?」
有無を言わさず、イーナは俺が渡した瓶の中身を、大臣に無理矢理飲ませ始めた。
ジタバタしてはいるが、クレアも拘束に協力しているから、抵抗は無意味だ。
ちなみに、今の俺は無言でいるようイーダからお願いされている。
俺が喋ると、周りの人間が委縮してしまうかららしい。
まあ、喋らないでもいいっていうなら楽ができるから、悪くはないな。
「ゲホッゲホッ! い、いきなりなにをする!」
「まあまあ、落ち着いてくだされ……ところで、ワシらの食事に毒を盛ったのは、お主の差し金ということで合っておるかのう?」
「はぁ!? そんなこと、私がするに決まっているでしょう! …………ほあああああああああああああああああああああああ!?」
よし。
薬はちゃんと効いてるみたいだな。
イーダの質問にも正直に答えてくれた。
「なに!? ヴェルディナンド! 今の言葉は本当か!?」
「へ、陛下!? い、今のは本当です! なぜか口から真実しかってうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
大臣はかなりテンパってるようだ。
いきなり自分の口が本当のことしか喋れなくなったんだから、それも当然か。
「き、貴様! いったい私になにを飲ませた!?」
「なにって、人を正直にさせる薬よ」
「ワシらが旅の道中で手に入れた物じゃ」
大臣に飲ませたのは、『ショージキ草』なるものを煎じて作った『ショージキポーション』だ。
これを飲んだ人は、しばらくの間、真実しか口に出すことができなくなるという一品である。
ジョークアイテムみたいな物だけど、結構役に立つな。
ゲームをやってるときにゲットした覚えがあった。
なので、アイテムボックスの中にあるかと思って探してみたところ、予想通りにあった便利アイテムだ。
似たようなものとして『ウソツキポーション』なる物もある。
でも、こっちは多分使わないだろう。
これを使うくらいなら、人を惚れっぽくする『ホレボレポーション』とかのほうがまだ有用だ。
「それで、これを料理人やメイドに飲ませたところ、毒を盛った人物が判明したのよ」
「さらに、その人物から首謀者を辿っていって、『ヴェルディナンド卿』から密命を受けたという情報を手に入れたのじゃよ」
「そ、そんな馬鹿な!?」
結構大変だったぞ。
慎重に動いてたのか、大臣の名前が出てくるまでに何人も経由したんだから。
おかげでポーションも10個くらい消費しちゃった。
まだ数本残ってるから、別にいいんだけど。
「ヴェルディナンド……まさか、貴公がこのようなことをするとは……」
「待ってください陛下! わ、私は金や地位や権力を得るために、今まで陛下に忠誠を誓っているフリをしてまいりました!」
「うるさい! 口から真実が漏れておるぞ!」
「あああああああああああああああああああああああああああああ!?」
さっきからうるさいなー。
大の大人が慌てふためくのは見苦しいぞー。
「貴公が毒を盛ったことには、余も驚きだ…………他にもなにか、よからぬことはしておらぬだろうな?」
「それはもう、沢山してまいりました! 今日は毒だけでなく、王女殿下に暴漢を仕向けたほどでってええええええええええええええ! 死ねこの喋る口があああああああああああああああ!」
うわー……。
そんなこともしてたのかー……。
王女殿下って、外を歩いているときに会ったアレスティアって子のことだよね?
暴漢に襲われかかってたけど、あれって大臣の差し金だったのか。
「どうしてそのようなことを……」
「ぐぬ…………」
喋るとボロが出るとわかってか、大臣は口を噤んだ。
でも、時すでに遅しって感じだろう。
俺たちに毒を盛ろうとした犯人は、この男で決まりなんだから。
「…………! そ、そうだ! 私がこのようなことを口走っているのは、そこにいる勇者のせいだ!」
「? それがどうしたというのだ?」
「おわかりになりませんか! 陛下! 私の発言はすべて、勇者にわけのわからぬ薬を飲ませられたせいなのですぞ!」
「だから、あの薬は人を正直にさせる物なのだろう?」
「それはあくまで勇者側の自己申告にすぎません! 実際のところは、なんの薬かわかりませんぞ!」
「ふ、ふむ……」
あ、くそっ。
大臣は王様に俺を疑わせようとしてるな。
どうしよう。
このまま『信じてください』と言って、どこまで信じてくれるものか。
「……それでは、誰か別の者にこの薬を飲ませて、効果のほうを検証するかのう」
イーダはそう言いながら、俺に目配せをしてきた。
なので、俺はアイテムボックスから『ショージキポーション』を取り出す。
もしかしたら、ショージキポーションの効果を実証しても『それは私が飲んだ者ではない!』とゴネられるかもしれない。
少なくとも、俺たちが本当に人を正直にさせるような薬を持っているのだと証明できれば、大臣をまた追及できるだろう。
「でも……誰に飲ませるのよ?」
この場には、俺、王様、大臣の他にも、ヌルシー、フラミー、イーナ、イーダ、クレアといったメンツが揃っている。
しかし、王様と大臣以外の奴に薬を飲ませても、意味ないだろう。
大臣は、勇者側の言葉が信じられないと言っているわけだからな。
流石に、王様には飲ませるわけにもいかないだろうし、さてさて、どうしようか――。
「ならば、その薬、余が試飲して効果を確かめよう」
俺が悩んでいたそのとき、部屋のなかに1人の女の子――スタート王国第一王女のアレスティアがやってきた。




