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~中1のバカ達の話~②

 ――ピピピピ……

「キョン子は俺の嫁ぇぇぇ――!! ……って、何だ。夢かよ。」

 今日は、とてもいい夢を見た。2次元に行くとかそんな夢。超楽しかったッ! そして、何かの感覚のある手元に目をやった。……なるほど。そういうことか。ウチの手には、しっかりと同人誌が握られていた。読んだまま寝ちゃったんだなぁー。それにしても、もしかしたら見たい夢のマンガを持ったまま寝ると、そのマンガの夢が見れるのではないだろうか。


『……結構な、バカ……なんだよね。』


 おい待てよぉぉーー!? 何か、今すごくバカにされた気分。まぁ、別に。バカですが何か?

 さてと、起きますか。眠いよ。夢の続きみたいよ。さーて、2度寝でもす「詩乃~! 海翔君来てるわよー!」

「あいよー!!」

 ……って、流れ的に毎日普通に幼馴染が迎えに来てる的な感じだけど、違うよ!? ウチんちなんて滅多に来ない! 何があったんだ!? 驚きのあまり即座に2度寝中断。ってか、朝ごはん、着替え、身支度何にもしてねー!

「ってな状態らしいけど……どうする、海翔君?」

「そうですか……じゃ……」

 2人して俺の心読んでんじゃないよ! うぅ、うぅぅ。海翔行っちゃったよー。


          ○-○


 ガチャ「いってきまーす」

 いつも通り、ドアを開け、見た先にいたのは。

「ザキ!!?」

「うぃーっす」

 な、何だろこの展開! もしかして、これが伏線というもの?! ついにフラグ立った!? でもごめん、ウチは海翔のことを幼馴染とか友達とか天才とかメガネ萌えとかそういう目でしかみてな「おい、お~い! 帰ってこーい。」

「んで、何で今日は突然朝迎えに来たのかな? かな?」

「実は……」

 すごーく、真剣そうな顔をしながら言った。

 そこで、やっとわかったことがある。今日は、海翔の……、

「メガネがない!!」

「……あ? 気付いてたのか?」

「いや、明らかな違和感について突っ込んでみただけなんだけど……」

 いつもは、黒ぶちのメガネをかけているのに、今日はメガネをかけていない。

 そのせいか、何かものすごい違和感。やっぱり素顔もカッコいいなおい。

「実は……昨日、俺ん家で勉強会(らしきこと)しただろ? あのあと、実は学校に忘れ物をとりに行ったんだよ。夜中だけど、警備員が偶然いて、入れてもらってさ。そのあと、帰り道歩いてたら、突然メガネが消えて周り見渡しても全然無かったんだよなぁー。っていうかさ、ぶっちゃけ暗闇+目の悪さで見えないっていうのもあったんだけどな。」

「は? そんな変なことあるの?!」

「だから言ってんだろうが。そこで、お前にもメガネ探しに協力してもらいたい。」

「えぇー、どうしよっかなぁ?」

「じゃ、いいや。」

「いや、やるよ! 手伝うよ! だから、1度言っただけで諦めないでくれ!!」


『もう1回頼んで欲しかったんだね★』


 いっぺん死んどけ。

「う~ん、それでな、何でお前に協力を頼むなどということをしたかというとな。」

「ん? そりゃ、1番頼りがいがあるからじゃ」

「家が1番近いし、常に暇人だからだ。」

「ヒドい言い草だな!!」

 そうツッコんだあと、海翔は「冗談だよ」と言って、笑った。メガネをかけてない海翔の笑顔は、少しいつもより間が抜けている気がした。


          ○-○


 人の恋愛というのは、儚いものだ。

「ゴメン」

 そう言って振られた蜜は、泣きながら走り去ってしまった。

 そんな現場を、昼休みの移動教室中に偶然目撃してしまった。日直で、早めに理科室の鍵を開けようと1人で行ったため、ほかに見ている人はいなかったけど、何か罪悪感……。

 初恋がまだな自分にとって、失恋とは当然無縁だが、まぁ、悲しいだろうなというのはわかる。漫画でよく見るから。そんなことを考えながら、結構長い時間ボケーッと止まっていた。

「詩乃?」

 アニメキャラの失恋ソングカバー曲が脳裏でフリーズいていたとき、ふいに後ろから声をかけられた。

「え、海翔!?」

「やっぱり詩乃か。」

「いや、みればわかるでしょ?! ってか、何でここに?」

「メガネがないとほとんど見えん。だから、メガネ探しを手伝ってもらおうとしたらお前が教室にいなくて、クラスの女子に聞いたら理科室に向かっていると聞いた。」

「……あぁ、そっか。じゃぁ、鍵を開けたら探しますかっ!」

 さっきの今で、よく普通に会話を交わせるなぁとか思いつつ、若干ウチを探したっぽいところが嬉しかった。なんだよ、やっぱりウチのこと頼りにしてるんじゃんー☆

「で、探すって、どこから行く?」

「そうだな……」

 そう言うと海翔は腕組をして考え出した。

「あ、とりあえず職員室に訊きに行く?」

「詩乃にしてはまともな意見だな。」

「ウチはいつでもまともだよ!」

「え?」


『え?』


「ダブル攻撃とかやめぇぇぇ!」

「廊下で騒ぐな」

 2人で廊下を並んで歩く。

 どうでもいいけどよく一緒にいるウチらが付き合っている的な噂が流れないのは全く釣り合ってないからですね、よく分かります。

「失礼します。1年B組の山崎海翔です。あの、落し物を……」

 定番の挨拶をし、奥の方へ入っていく。ウチはちょっと職員室が苦手だから、外で待っていた。


『礼儀が悪いってしつこく注意されたことがあるんだよね☆』


「黙らっしゃい!」

 べっ、別に職員室前で30分くらい注意なんかされてないんだからねっ!

「失礼しました」

「あった、んじゃないのかぁ」

「メガネなんて届いてない、だと」

「そっか……」

 あぁ、メガネをかけていない海翔って、何て冴えないんだろう。

「じゃぁ、放課後……」

「ん?」

「詩乃、夜に昨日通った道、一緒に行ってくれないか?」

 たっ。頼られた……!?

「あ、そっか、今日はイナイレが――」

「いいぜっ! アニメは録画すればいいけど、メガネは1秒を争うもんね!!」

 まぁ、リアルタイムで見れないのはとってもとっても残念だけど、計りにかけたら!

 やべ、アニメの方がちょっと重かった……。でももう言っちゃったし、うん。

「じゃ、今日も待ってるから」

「ん、よろしく」


          ○-○


「終わった」

「あ、かいとー。お帰りなんだよ!」

 今日はメガネがない新鮮さのためか、女子がいつも以上に多かった。多分。何だ、今度は裸眼萌え集団?

 だからウチは、木陰で優雅に禁書目録を読んでいた。

「で、えーっと、通った道、いってみよー!」

「そういえば詩乃」

「何ー?」

「何で視界があまり開けていない夜に、あえてメガネ探しなんだと思う?」

「疑問にも思いませんでした」

 あぁ、言われてみれば確かになー。

「はぁ……。何となく、目星がついたっていうか。それが、夜じゃないと意味がないんだよ。」

 浅く溜息をついた後に、そう続けた。

「目星がついたって?」

「見当がついたってこと」

「そっちじゃなくてぇぇ!! どんな、って話!」

「あ、そうか」

 大分バカにしてますね。ウチはそこまでバカじゃぁなーい!

「多分――」

 なるほど。


          ○-○


「木野栗君」

「あ、な、中原さん!」

 向かった先は公園。いつも通り光合成中だった。

「あのさぁ、メガネみなかっ……」

「「あ!」」

 海翔とウチは同時に叫んだ。

 海翔の言う通り、一瞬にして消えたのはぶらさがって揺れてる木野栗に引っかかったからだったのだ。

「俺のメガネ!!」

「えっ?」


『それはコンマ数秒の出来事だった。海翔君が木野栗君(っていうかメガネ?)に向かって飛びついていったのだ☆それに驚いた勢いで木野栗君が木から落ち、メガネを踏みつたのだ☆』


「俺のメガネえぇぇぇ!!」

「なん……だと……!?」

「うわぁぁぁ! 山崎君ごめん!」

 それぞれリアクションをとるも、メガネは砕け散っている。悲惨に。


          ○-○


「へー、それで新しいメガネ買ってきたんだ!」

「おう」

 土曜の午後、暇だったから海翔の家に遊びに行ったら、前と同じ黒ぶちのメガネをかけていたのだ。

 あの後、気付けば次の日(今日)休みじゃん、そう思い、今日部活も休んで買いにいったんだそうだ。

「いや、やっぱり海翔にはそれが1番似合ってるよ」

「おぉ、俺もこれが1番しっくりくる……。」

 かくして、海翔のメガネ行方不明事件は、幕を閉じたのだった。


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