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~中1のバカ達の話~①

「律令って何? どういう意味だっけ?!」

「は? 中1にもなってまだそんなこともわかんねぇのぉ?」

「中1で習いましたが。で、何だっけ?」

「自分で調べろ。」

「ドケチ。」


『彼女の名前は中原詩乃。中1の軽度なヲタクだ。』


 ――そしてここは、並盛中学校……ではなく、市立緑ヶ丘東中学校(通称東中)。ちなみに、去年できたばかりの新設校だ。

 更に詳細をいうと、この東中の東階段を3階分上ってすぐのところにある1年B組の教室の、窓側の1番後ろの1番授業サボれる席。ウチの正位置だ。まぁ、せっかく神様がくじ引きでプレゼントしてくれた席だ。サボりを満喫しようじゃないか。

 ……しかし、何故そんなウチが『サボりを満喫☆』とか言いながら真面目に律令こと社会、歴史科の話なんかをしているかというと、1週間後の期末テストの点数を気にしてのことなのです。点数が高いと成績がよくなって、いい高校にいけるから……というのはちょっとした冗談です。

 本音言うと、まぁたしかに点数を気にしてのことだけど、あんまりにも低いと、親にパソコンの時間減らされたりしちゃうわけだよ。お小遣い減らされたりしてマンガが買えなくなっちゃうわけよ。

 心のオアシスが!

 しかし家で勉強するとだるい+休憩という名のサボり(マンガ)が重なって勉強できないわけ。まぁ数学は計算のやり方抑えときゃ楽勝だし? 隣はマンガでよくある勉強しなくてもできる天才君だし? うん、いざとなれば引っ張り出して補修につき合わせるまでだ。ま、そんなわけで数学なんかせず苦手な暗記系の社会をやってるわけよ。

「でもさ、お前勉強なんかしちゃってえらいよな。」

 なぜか、数学の時間に社会やってて、褒められた。

 こいつは隣の席の天才君こと、幼馴染の山崎海翔。中1で幼馴染って呼ぶのもどうかと思うけど、一応同じ幼稚園に通っていて、家もまぁそれなりに近い。というか隣。勉強全然してないくせに、頭がいい。本当に、世にいう天才ですね。はい。ムカツク。

「ふんっ! ウチはお前と違って頭悪いし。さすがにお前と違ってマンガ読むほど余裕じゃないし。……ってか、それ、銀魂じゃん!!」

「うん。友達に借りた。」

「偉いよ、偉いよその友達君! ってことで、祝・銀魂デビューとして、海翔のことを今度からザキと呼んで…」

「黙れ。死ね。」

「えぇー、たしかに地味かもしれないけど、意外とザキもいいと思うんだけどなぁ……。」

 キーンコーンカーンコーン。2次元……2時限目終了のチャイムが鳴った。こんなに盛り上がってたのに気付かない数学教師とこの席は、ある意味すごいと思う。でも、こんなに遊んでいたとしても、海翔もウチもテストの点はいい。それに、ノートはとってなくても……

「はい、中原さん。ノート今日もとっておいたよ。」

「ありがとう、木野栗君。相変わらずうまいねぇ~!」

 パシりの木野栗学が書いておいてくれるから。木野栗は鈍感だから、押し付けを喜んで受けちゃうんだよねぇ。そんで、現在委員長(笑)。

「それじゃ、次の授業もよろしくね。」

「はい、わかりました!」

 ちなみに、学は(一応)人間だけど、公園に生えている木の光合成で生きている。その木に繋がっているどんぐり型の帽子みたいなのをかぶって吸収するらしいけど…ぶっちゃけ、そこに住んでるからホームレスっぽい。

 あ、このはなし冗談抜きだよ? ここだけ異次元っぽいとかツッコミはなしで。

「まて、詩乃。次は体育だぞ。何を頼むんだ。」

「…………さぁーて、はちまきどこいれたっけな?」

「ふっ。忘れてたんだろ。」

「ちっ、ちがうもん! 次が嫌いな教科だという現実を受け止めたくなかっただけだもん!!」

「そっちの方がなお悪い。」

 大体ね、体育なんて何のためにやるのさ。

 第一、早く走れたら何? 早く泳げたら何? 高く飛べたら何? とか、思わないかな? かな? あーあ。黒子のバスケが読みたい。

「――何、体育嫌いの言い訳か?」

「うげっっ!! 何故に海翔?! 心読まれたっ!?」

「あっはっは! オレに不可能はない!」

「じゃぁ、一緒に体育サボろーぜザキ」

「1-B、だまって並べー!」

 ちぇーー。ザキはいいよなぁー。運動神経良くて。

 ちなみに海翔は、新設校のためか、1年生ながらサッカー部でキャプテンを務めている。その上、東中は帰宅部もアリ(ちなみにウチも)なので、天才で運動神経よくてメガネが似合ってモテる海翔目当てで、サッカーフェンスの前には女子が常にドッバーッ!! だよっ。

 でも実はたまにウチも入ってみたり。海翔カッコい「って何言わせてんじゃボケェェーー!!」

「は? どうした? 体育が嫌過ぎて現実逃避して妄想でもしてたか? あ?」

「今日の海翔怖いなおい、偶然隣にいるタイミングがよすぎる。」

「ん? そうなのか?」

「そして今の台詞に対してだが、違くない。違くないが死んでもらう。」

 首絞め。あはっ!


『さりげなくボディタッチだね☆』


「死ねぇぇ!!」

「ぐはっ……! ちょ、し、の……」

 あり? あーぁ、死んじゃっ「勝手に殺すな……! かろうじて生きてる!!」

「ちっ。殺り損ねたか。」

「何をぉ!?」

「そこ、うるさい! 2周走ってこい!」

「「何でそうなる!?」」

 そして、その後、200mトラック2周を2人仲良く走らされ、海翔は超余裕そうな顔して1分15秒、ウチは2分半かかった。悪かったなぁ、足遅くて!


          ○-○


「起立、礼!」

《さようならぁ~!》

 ついにきた! ウチの待ちに待っていた時間、放課後だぁ~! これで自由だぁーー!! やっと束縛から解放される! あとは、家に帰ってマンガとゲームとPCと……ケケケ……。

 っと、その前に海翔の部活でも見に行くか。

「あ、詩乃、今から海翔君見に行くの?」

 話かけてきたのは隣のクラス、C組の友達の蜜。違う小学校出身だったけど、体育のサボり……見学の時話して、見事に意気投合! といった感じだ。


『ちゃんと友達もいたんだ?!』


 失礼な! 幼馴染とパシりしかいないわけじゃないからね!?

「あぁ、うん。そうだけど、何で?」

「あのさ、これ渡しといてくれる、かな?」

 ピンク色の封筒。そこに、封を閉じるためのハート型のシール。ウチは決して鈍感ではない。見ただけでわかる。

「こ、これは……!」

「じゃ、よろしく! また明日ね!!」

 走り去る蜜を見ながら、呆気にとられ、口が半開きになる。

 そうか、蜜は……。テニス部だったな、うん。スコート萌え。


          ○-○


 ……って、うっわ、何あの女子の数。めっさ群れとる。何? 絶賛かみ殺すキャンペーンですかこんにゃろー。海翔全然みえねーよ。全員メガネ萌えか?! ちなみにウチはメガネ萌えだ!!


『誰も聞いてないよそんなこと。てか、どうでもいいし。』


 何か急に冷たくなったなオイ!

 《キャー!!!》女子の驚くほど高い声が響く。海翔がゴールでもきめたのだろう。ってか、これはさすがにうるさいんじゃないかな。モテ男乙。


『そして時は経ち、18:30』


「さて、詩乃、帰るか。」

「あ、ザキ! ……あり、寝てた?!」

 声だけに聞き飽きた自分は、気がつくと日陰に避難し、木によりかかりながら立ったまま寝ていたらしい。

「あ、うん、帰ろう!」

「ザキと呼ぶな。」

 とかいいながら、2人きりで歩いて帰る道。今日は曇りのため、夏の6時半なのにちょっと薄暗い。そんなところで2人きりだよ? 何かイベントでも起きないかな。

「あ、そうだ。」

 そんなことを考えていたところで、さっきの蜜の手紙を思い出す。

「これ。」

「ん? あ……」

 大分鈍感な海翔も、見てわかったようだ。ってか、貰い慣れてるからか? そういえば、海翔と仲がいいといわれているウチを通してラブレターを渡す女子も少なくはない。くそ、モテ男め……!!


『告白されたことなんてないもんね☆』


 黙れぇぇっ!

「……えーと……大田蜜って誰だ?」

 え、ってかそこから?

 海翔はかなりの無関心で、その上結構目立つ存在なため、知らない人から告白されるのも初めてじゃないとかしょっちゅうとか。

「うーん……C組の……」

「さすがに、名前聞いても分かんない相手と付き合うわけにはなぁ……」

 振った。まだ本人には言ってないけど、振ったも同然だ。

 ってか、気まず……。

――――沈黙――――

「ねぇ、海翔。」

「何だ。」

「なんでもない。」

「じゃぁ呼ぶな。」

――――再び沈黙――――


『詩乃ちゃんは、何とか話題を切り出そうと頑張り続けたんだよ☆でも海翔君はイニシャルもKYだからそのまんま空気読めないで終わっちゃったんだ☆え?な』え? 何? 空気読め?どこにそんな本売ってんの? とかいうノリツッコミはいらないから。『ひでー!』


 ――結局、沈黙のまま帰宅。

「ほんじゃ、後で行くねー。」

 夜、別れたあとに会う約束。

 おぉ、ニュアンスとタイミング次第ではエロく聞こえなくもないかもしれない……!!

 まぁ、何かというと、毎日海翔の家でテスト前補習授業をしているんだよ。ウチ偉!

「お邪魔しまーす!」

「詩乃ちゃんいらっしゃーい。海翔部屋にいるわよー。」

 海翔の部屋は2階の奥にある。何十回、もはや何百回もき続けているウチは、この家の常連(?)だ。

「おじゃしまー!」

「よぉ、詩乃。」

 部屋に入ると、海翔は勉強机に向かって勉強をしていた。

 そしてウチは、もう1つの特設机の方ではなく、本棚に向かった。

「ザキ、また新しい漫画買ったの?!」

「ん? おう。昨日な。」

 テスト前補修授業といえど、ほとんど漫画読んで5分の4が終わっちゃうんだけどね☆

 海翔は普段ウチの持っているようなヲタ系漫画はあんまり……というか全く読まないけど、サッカー漫画の冊数は、ヲタク並だ。どこからそんなサッカー漫画の情報を収集しているの? ともいわんばかりの量だ。

「やっぱり海翔の部屋って和むなー。」

「人の部屋で和むな。ベッドに寝転がりながら漫画を読むな。勉強をしに来た筈だろう。」

「あー、はいはい。そうでしたね。」

「で、今日は何をカンニングしにきたんだ?」

「カンニングではなくカンニングの仕方を教わりにきたんだっ! ……ではなく、普通に……えっとね、社会がもう、全くもって意味不なのと、数学の今日やっていたところの解説を願いたい。」

 おっと、ちょっと本音がでちった☆

 ただ、何気なく漫画読んで、勉強して、ちょっとした会話を交わすだけでもね、海翔と一緒なら楽しくてしょうがないんだよ。

 まぁ、そんな乙女な台詞なんてウチにはありえないけど。ってか、漫画は1人で読んだ方が楽しいけど。

 あ、ちなみにウチにも海翔にもお互いの恋愛的フラグは立ってないはず。

「はぁーっ。やっと宿題終わった~!」

「実際やったのなんて10分程度だけどな。」

「……。それじゃ、今日もお世話になりました! ば~い!」

「ん。じゃーな。」

 そう挨拶を交わして、ウチは自分の家に戻った。それから、夕食を食べたり風呂入ったりと、色々終わらせた。今日は、さっき昼寝したばっかりなはずなのに、やたら眠い。まだ、9時なのに。

「よっし! マンガでも読むか!!」

 そんな、平凡な日。

 ――まさか、次の日にあんな事件が起こるとも知らずに。

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