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春子の喧嘩
その日はひどい雨が降っていた。雨神の力を受け継ぐ春子が、また大ゲンカをしている。そのことが分かるのは、神妖族の血を受け継いでいる子供達だけだろう。
「天音、止めなあかんやろ!いっしょにいこ!」
青咲天音は、香鍋美香に引っ張られるようにして、仕方なく雨の中を傘をさして駆けだした。
青咲家の特徴ともいえる、まるで異人を思わせる明るい茶髪に、縮れっ毛は、地元の人々からはとても珍しがられた。しかし、その「異国髪」の徴をもった青咲家は、間違いなく髪と妖の血を繋ぐ、神妖族の一員として受け入れられていた。人間の思いと呪力が降魔剣に宿った結果、生まれたシラヌイ。
神羅刀一族の血を繋ぐ血筋だ。
「天音ちゃんは、主の器をもってらぁ。だって、うっつくしい黄金の髪で生まれてきたべ」