表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふれあい  作者: 日寝月歩
68/68

エピローグ

 学校で初火と別れた後、教室へ向かうと、水萌が黒板消しをクリーナーでごしごし擦っていた。

「おはよ、水萌。遅くなってゴメンね、鍵取らせに行かせちゃった?」

「あっ、陽火くん。おはよ! これくらいいいよ。気にしないで」

 黒板消しごと手をぶんぶんと顔の前で振る水萌。

「ありがとう。次は……黒板消せばいいのかな?」

 前に一度日直に当たった事があった筈だが、サボったので仕事内容を把握していない。


「そうだよ、はいこれ。キレーにしといたよ」

 そう差し出された黒板消しを受けとる。

「ありがとう。助かるよ」

「うん。どういたしましてっ」

 黒板を端から消していく。下の方にだけ消したような痕跡があるのは、水萌が消そうとして上の方には届かなかったからだろう。

いじらしい。水萌に重々お礼を言う。


 二人で喋りながら、日直の仕事を片付ける。こういうのも、悪くない。

 仕事が終わる頃には他の生徒も来始めて、担任も入ってきた。

「ありがとう、水萌。助かったよ」

「どういたしまして。陽火くんが頼ってくれるなら、あたしも嬉しいからさ」

 言葉を交わして、お互いの席に戻る。チャイムが鳴るまで臨視の相手でもしてやるか。


「よっ、久しぶり」

「おう、なんでメール返さなかったんだよ。寂しいじゃないか!」

 いつも通り、臨視は臨視である。

「あー、気付かなかったんだよ。ほら、コレ返すな」

 文庫を二冊、臨視に押し付ける。

「どうだった? 楽しめたじゃろ? ……っと、そうだコレ」

 臨視が差し出したのは、返したものとは別の小説。


「頼まれてたロリもの。こんなご時世だから中々見付からなかったけど」

 ぼくが積極的に頼んだみたいな言い方をしてほしくないけれど。まぁ、臨視が貸してくれる本はあんまりハズレないし。

 ありがたく貸して頂こう。

「……サンキュな」

 小説をカバンに入れると同時に、チャイムが鳴る。今日もこれから、退屈な授業が始まる。


「やっと昼だ」

 四限目終了のチャイムとともに漏れる、溜め息のような感想。

教室は俄に解放感に沸き立つ。

「飯行ってくるな」

 後ろの席の臨視に声をかけて、弁当を片手に教室を出る。


「待って、陽火くん」

 階段を降りるていると後ろから声がした。

「水萌、どうかした?」

 振り返って、その声に応える。

「うん……その、一緒にお弁当食べたいなぁ、なんて」

 弁当箱を後ろ手に持った水萌は、少し顔を赤くした。

「保健室で食べるんだけど、水萌がいいなら一緒に行こうか」

 ご飯は大勢で食べた方が美味しいしな。木舞さんも許してくれるだろう。

「うん! 行く行く!」

 タタッと近寄ってきた水萌が、ぼくの隣に並ぶ。


「失礼します」

 保健室の扉を開けて中に入る。水萌もぼくに続く。

「あっ、お兄ちゃん!」

 部屋の中から明るく声がかけられる。聞き間違えようがない初火の声だ。

「陽火、来たのか。そちらは……」

 奥から出てきた木舞さんがぼくの後ろに隠れた水萌を見つけて尋ねる。

「あっ、えっと、陽火くんのクラスメイトで日向水萌っていいますっ」

「水萌も一緒にお弁当食べたいって言ったので連れてきました」

 木舞さんに向き直って説明する。初火も木舞さんも納得したようだった。


「久し振りだね、ヒナちゃん。わたし気付かなかったや」

 席に座った水萌に初火が声をかける。

「ん? 二人は知り合いだったのか?」

 木舞さんが水萌より先にその言葉に反応する。

「はい、小学校の頃に陽火くんと初火ちゃんと三人でよく遊んでたんです」

 一拍遅れて、水萌が答える。

「本当に久し振りだね、初火ちゃん。やっぱり気付いてなかった? 陽火くんも先週ようやく気付いてくれて……」

 水萌が少し苦笑いでそう言った。


「ゴメンね? でも髪の色変わってたし……でもその髪の色も可愛いよ」

「そう? ありがとう。初火ちゃんは綺麗な赤のままだったから、すぐにわかったよ」

 ――――まぁ、こんな風に思い出話に花を咲かせたり、学校生活の話をしたり、三人で(ぼくを除く三人である)仲良くお喋りしながら昼休みを過ごした。

 なんでぼくは人が多くなると、話に参加できなくなるのだろうか。


「そろそろ教室に戻ろうか」

 タイミングを見計らって、昼休みが残り五分であることを知らせる。

「そうだね、じゃあお邪魔しました。月見里せんせい」

「木舞さん、お邪魔しました」

 水萌と初火が、弁当を持って立ち上がる。

「じゃあ、行きますね。木舞さん」

 二人の後に続き、ぼくも立ち上がる。

「ああ、じゃあ。……陽火」

 部屋を出る直前で、木舞さんに声をかけられた。


「ありがとう。楽しかったよ」

「いえ、ぼくは何も……」

「そんなことはない。……また今日も放課後来てくれないか?」

 窺うように、木舞さんがそう訊いてきた。

「分かりました。また放課後」

「じゃあ、午後も頑張って」

 そう木舞さんは笑顔でぼくを送り出してくれた。


「陽火くん、早く!」

「遅れちゃうよ、お兄ちゃん」

 廊下に出ると、水萌と初火がぼくを急かす。


「今行くよ」

 ぼくは廊下を蹴った。

                              ――――――――了

 一か月間「ふれあい」に御付き合い下さった皆様、本当にありがとうございます。

 稚拙ではありますが、少しでも多くの方に楽しんで頂けたらと、常々思っております。

 あと、感想なんぞ頂けたら嬉しいなぁーなんて……//

 

 さて、「ふれあい」は終わってしまいましたが、もう一作私が連載している作品がありまして……。

 ぜひとも、そちらの方も読んで頂けたらなぁ、と。

 ということで「ヴァンパレード」をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ