嘘 夢
髪を乾かし終えた初火を伴って二階へ上がる。
「お休み、初火」
「うん。おやすみなさい、お兄ちゃん」
初火の部屋の前で別れ、自室へ。
「……お兄ちゃん」
数歩進んで呼び止められる。
「なに、初火?」
「あのね、今日だけでいいから。お兄ちゃんと一緒に寝たいなぁ……なんて」
「いいよ、一緒に寝よ」
どうせ今日だけでないことは分かっている。それに最近こういう事も増えたし。
「うん!」
初火が嬉しそうについてくる。部屋に入って初火は、まず最初にぼくのベッドへとダイヴした。
「んー、ぬふふふ」
奇妙な声を出して、初火が布団に顔を埋める。ぼくも今日は昼寝しないので少し眠い。寝る時間にしてはかなり早いがもう床につこう。
「初火、もうちょっと寄って。電気消していい?」
「はーい。マメ電球は消さないでね?」
「分かってるよ」
照明を落とし、初火の隣で横になる。
「お兄ちゃん、ちょっと喋ろ?」
初火が、こちらを向いて言う。吐息がかかるほどに近い距離で。
「いいよ。どうかしたの?」
尋ねると初火は視線をぼくから少し逸らして、はなし始めた。
「あのさ……お兄ちゃん、さっきヒナちゃんとメールしてたけど別に付き合ってるわけじゃないんだよね?」
「付き合ってないよ」
そう答える。すると初火は少しホッとした様子で続ける。
「それじゃあ、お兄ちゃんってさ。……誰かと付き合ったこと……あったりする?」
少しだけ、返答に困る問だった。
(……この時、)
「ないよ。誰とも付き合ったことない」
(ぼくは、)
「そっか、ちょっと安心」
「そう。ならよかった」
(初めて、)
「うん。わたし、お兄ちゃんが他の女の子と仲良くしてるの……あんまり好きじゃないし。……その、お兄ちゃんって……さっきの小説に書いてあったようなこと……女の子としたことあるの?」
「ないよ。そんなこと、したことない」
(初火に、)
「ふぅん。ふふっ。ならいいや。変なコト聞いてゴメン。おやすみね、お兄ちゃん」
「おやすみ、初火」
(嘘を吐いた。)
―――――夢。
久しぶりに土岐ハルカの夢を見た。
彼女との日々は何もかもが初めてで、未だに褪せることはない。
隠れながらの交際だったが、それすら楽しめるほどに彼女は魅力的だった。
ただ、それだけの話。
明日、最終話投稿します。




