おはよう
朝起きると隣で初火が眠っていた。
「落ちてきた……わけじゃないよな。確信犯か」
気持ち良さそうに眠っている。おでこに手を当てると昨日のような熱は無かった。すると気付いた初火がうっすらと目を開いた。
「……お兄ちゃん、おはよ」
寝起きでポヤポヤした雰囲気の初火はそう言いつつ再び布団に顔を埋めた。
「おはよ、まだ寝てていいよ。先生にはぼくが連絡しておくから」
「ありがと、お兄ちゃん。すぴー」
……可愛らしく寝るのは構わないのだけれど、枕代わりにぼくの腕を使わないで頂きたい。
起きられないし、結構痺れる。プロレスを生で見るくらいシビレる。生で見たことないけど。
「はー、まぁいいか」
溜め息と吐きつつ、枕元に置いてあるケータイを片手で探り時間を確認する。午前7時半。まだこの時間では出てきている先生も限られているだろう。
「木舞さんに頼むか。ケータイなら繋がるだろうし」
電話帳を開いて木舞さんの番号を探す……間もなく一目で見つかる。登録されてる人数が一桁だから。
センチメンタルをはね除けて木舞さんにコールする。ツーコールきっかりで木舞さんが出た。
『もしもし?』
「おはようございます、木舞さん。明坂陽火です」
『ああ、おはよう。どうかしたのか?』
木舞さんが凛とした声で尋ねる。
「はい。実は初火が熱を出しちゃって、ぼくも看病するので担任に欠席の連絡をしておいてもらえますか? 初火はA組でぼくは1組なんで」
『そうか、分かった。君が休む必要はない気がするが……まぁ、伝えておくよ』
「ありがとうございます。木舞さん」
『いや構わないよ。では、お大事にな』
通話が切れる。これでOK。ぼくも初火と共に二度寝に興じるとしよう。
「……陽火さま?」
かなみさんの控え目な呼び掛けで目を覚ます。
「あう、はい」
寝過ぎたからだろうか、頭がくらくらするのだが。
「お昼ですけれど、どうされますか?」
そう問われて、時計を確認する。短針は既に頂点へと迫っていた。
「食べます。初火、起きれる?」
ぼくの腕の上で眠っている初火の肩を揺らす。……やべ、感覚が無くなって重くなってる。
「んぅっ、お兄ちゃん。……あっ、かなみさん。起きてます!」
ガバッと頭を上げる初火。一気に解放された腕の血管がドバドバと血液を流す。そこにシビレる! 別に憧れない。
「用意できてますけど、ここで食べますか?」
「あぁ、いや下で食べます」
「わっ、わたしも下でいいです!」
かなみさんの問いに初火は若干たじろいで答えた。
「では、待っていますので。ゆっくりで構いませんよ」
「ありがとうございます」
返事をするとかなみさんは笑顔で「失礼します」と言って出ていった。
ぼくは痺れた腕を擦りつつ、布団から起き上がる。
「初火、具合はどう?」
「うん、だいぶ楽だよ。じゃあ下に行こっか」
明るく返した初火の様子を見て、安心する。どうやら体調は元に戻ったようだ。
一階のリビングではかなみさんが料理を並べて待っていた。
「お待たせしました。じゃあ、いただきます」
「いただきまーす」
「どうぞ、お召し上がりください」
リゾット……ラザニア? とりあえずご飯にホワイトソースが混ざったヤツ。腹に溜まるものを食べていなかったので嬉しい。
初火は一生懸命ふうふうと冷ましている。そんなに熱くないと思うのだが。
「ご馳走さまでした」
空腹のせいか食べるのがかなり早くなってしまった。かなみさんも初火もまだ半分程しか減っていない。
一人だけ先に席を立つのもアレなので、ニュースを眺めつつお茶を啜る。それを見て今日は平日で、学校を休んでいることを思い出す。
「ご馳走さまでした」
「ごちそーさま」
朝ドラの再放送が始まった位に二人も食べ終えた。
「初火、昼からも一応休んでおきなよ」
まぁ、部屋でじっとしておくように。
「うん、わかった。そうする」
素直な返事だ。えらい。後片付けはかなみさんにお任せして、ぼくと初火は部屋のある二階へと上がる。




