おやすみ
特になんていうこともなく拭き終えると(布の中は手を突っ込んで拭いた。初火が恥ずかしがって、でもそれを隠そうと頑張って平静を装っていたのが可愛かった)どちらにせよ下着替えるんじゃないか? と、疑問が生じた。
「おにぃちゃん、タンスから着替えだして?」
ほら、やっぱり。なら最初から脱がしちゃえばよかったや。
「はいよ」
薄い水色の下着上下を取り出して初火に渡す。
「うん、じゃあ……えーと」
初火がもぞもぞと体を起こす。よし、脱がすか!
「着替えるから、ちょっとだけあっち向いてて? おにぃちゃん」
……きっとトイレでジロジロ見たせいだ。やめておけばよかった。
「もういいよ、おにぃちゃん」
初火に言われて素直に明後日の方向を向いていたぼくは、その呼び掛けで向き直った。
「じゃあパジャマはおにぃちゃんが着せて?」
「うん! ……ああ、分かった」
おっと、テンションが上がってしまった。落ち着かねば。
タンスから新しく取り出したパジャマを初火へ着せる。初火の人形のように愛らしい容姿と相まって着せ替え遊びをしているようだ。
「まだ早いけど、寝れるなら寝なよ」
脱いだ服と体を拭いたタオルを脇に置いて初火に布団をかけ直す。
「うん……おにぃちゃんはここで寝るよね?」
みんな大好き付加疑問。いいえ、なんて言えない。
「そうする。布団取ってくるな」
腰を上げると初火が不満そうな目でこちらを見てくる。
「……流石に布団は重いから、自分で取ってくるよ。ついでにトイレも行きたいし」
よく考えたら朝から行っていない。
「トイレはわたしも行きたい」
「じゃあ、先に布団とってくるからその後に一緒に行こうか」
「うん、わかった」
布団を取ってきた後、お互いのトイレタイムを眺めて、最後に部屋へと戻った。
「朝に比べたらだいぶ顔色良くなったな」
「うん、おにぃちゃんが一緒に居てくれたからね」
もし本当にそうなら嬉しい限りだ。
「まぁ、明日も一応大人しくしておきなよ」
「はぁい。……じゃあ、寝よっか」
「そうだな。おやすみ、初火」
「おやすみ、お兄ちゃん」
明日の訪れを、隣から聞こえる寝息と秒針が刻む時の音を聞きながら待った。




