ふきふき
「おにぃちゃん、汗かいたからお風呂入りたい」
「うーん、風邪のときはお風呂には入らない方がいいんだけどな。身体拭くだけで我慢してくれない?」
「でも明日学校……」
もごもごと初火が抗議する。
「休んでいいよ。こじらせるといけないし、明日もゆっくりしたらいい」
「んー。でもおにぃちゃん……」
「ぼくも明日休むよ。それならいいだろ?」
「ホント? なら休む」
嬉々として初火はぼくの提案を受け入れる。
「じゃあ、お風呂は我慢ね。タオル取ってくる」
「ぁぅ、だめ」
捕まりこそしなかったがこんな可愛い妹のお願いをきかないわけにはいかない。
ちょうど都合良く、部屋に食器を取りに来たかなみさんに頼むことにした。
「何度もすみません、かなみさん」
「いいえ、なんでも言ってください。それがわたくしの仕事ですので」
かなみさんがにっこりと笑って、そう答える。
「では、わたくしはこれで。お風呂の用意はできていますので、いつでもお入り頂けますよ」
「ありがとうございます。でも今日は入らないかも(入れないかも)しれないんで、かなみさんが先に入ってください」
そう伝えるとかなみさんは柔らかく目を細めた。
「そうですか。ではそうさせて頂きます」
その声が少し寂しげに響いた。
「おにぃちゃん?」
少しボーッとしてしまっていたようだ。初火が心配そうに声をかけてきた。
「あぁ、ごめん。じゃあ身体拭こうか。自分で拭ける?」
フルフルと初火が首を振る。赤部子みたい、髪赤いし。いや、赤部子より断然可愛いけれど。比べるべくもないレベルで。
「じゃあ、ぼくが拭くからパジャマ脱いで?」
またもや初火は首を横に振る。
「……ぬがして?」
…………いや、別にいいんだよ? 変なこととか一切考えてないし。むしろ兄妹なら普通だし? ちょっとシチュエーション的にアレだけれど。
「じゃあ、脱がすよ?」
そっと、パジャマのボタンに手をかける。その動作に初火がピクッと反応する。
「いい?」
最後の確認である。いや、身体拭くだけなのだけど一応ね。本人も緊張しているようだし。
「……ぃぃ……ょ?」
顔を赤く染めているのは熱のせいだろうか、羞恥のせいだろうか? その涙を浮かべた表情がなんとも言えず奥ゆかしい。
「んっ……ぁっ……」
ボタンを一つずつ外す度に漏れる艶っぽい初火の声によって、禁忌を犯したような罪悪感が芽をだす。しかし、それがとても心地好く感じた。
「腕、抜いてくれる?」
袖を引っ張ってパジャマを脱がす。
その下には黒いキャミソール。少しだけ膨らんだ丘をできるだけ直視しないようにするが、それによって逆に意識してしまうので結局普通に眺める。
「あの……おにぃちゃん?」
「なに、初火?」
「えと……なんでもない。続き、お願いね?」
ここで逡巡タイム。上を脱がすか、下を脱がしてバランスをとるか。
そっと初火が膝を曲げる。下を脱がしての合図と受け取った。
「ちょっと腰あげてくれる?」
ぼくの要望を初火は黙って受け入れる。
そっとパジャマのズボンを抜き取る。薄いピンクのパンツだ。リボンが付いてるヤツね?
さて、問題はここからだ。山登りは八合目からが本番。別に膨らみを山と形容したわけではない。アレは丘だ。
意気込みとして、こっからが正念場だと自覚するためにね。
よし、脱がすか!
気合いを入れると、初火がススッとキャミソールの裾をたくし上げ初め、胸の下あたりで手を止めた。
「じゃあ、拭いてくれる?」
……ああ、その考えは無かったわ。別に全部脱がなくてもいいもんね。




