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回想(という名の自傷行為)
(以下陽火の回想)
『今日で中学校生活も終わりだな~』
桜のつぼみが膨らみを増す日和。暖かい日差しを受け、卒業式も終わったぼくと初火はリビングのソファに腰をかけ余韻に浸っていた。
いや、余韻に浸っていたのはぼくだけで初火は……
『お兄ちゃん……ううん、兄さん』
意を決したように握られた初火の拳は微かに震えていた。
『初……火……?』
どうしたんだ? と問いかける言葉すら出てこない。それほどまでにぼくは動揺していた。
『あのね、兄さん。わたし達このままじゃダメだと思うの……』
『えっ……?』
『だからね、もう高校生になるしこれまでみたいに……仲良くするのは……ダメだと思うの……』
何を言ってるのだ初火は。ぼくには何故だか、わからない。
『距離を置こう、兄さん。これからは(お兄ちゃん)とも呼ばないし、高校も一緒に登校しない。お風呂も一緒に入らないし、一緒の布団で寝ることもしない』
『なっ』
『部屋に入り合うのもなしだから。それじゃあ』
そういって、初火は部屋へと戻っていた。それ以来あまり会話らしい会話はしていない。
(回想終了)