キス
目が覚めると三時前。起きると同時に空腹感が意識を奪う。そういえば昼御飯食べそびれたんだった。
体を起こすと初火はぐっすりと眠っている。ゼリーに混ぜといた薬が効いているようだ。こうしないと初火は、薬を嫌がるし。
「今のうちに何か食べとこ」
そぉーっと、慎重に部屋を出て台所へ向かう。台所ではかなみさんがお米を研いでいるところだった。
「かなみさん、なんかつまめる物ってあります?」
「はい、おにぎりを作っておきました。すぐに用意できますよ」
ぼくが食べ損ねたのを気遣って作っておいてくれたのだろう。
「じゃあお願いします」
「かしこまりました」
そう言って冷蔵庫からラップに包まれたおにぎりを出してレンジへと入れた。
チンすること数十秒、いい感じに温まったおにぎりが登場した。
「いただきます」
「召し上がれ。それで、初火さまの御加減は如何ですか?」
「朝よりは落ち着いたと思います。今は寝てますよ。夕方また熱が上がるとは思いますけど今晩を過ぎれば大丈夫でしょう」
「そうですか。なら大丈夫そうですね。晩はお粥を作っておきましょうか?」
「そうですね。昼は食欲もあったみたいですから、そうしてください」
栄養のあるものを食べた方が治りも早いだろうし。
「かしこまりました。陽火さまは晩はどうされますか?」
「あー、初火の部屋で一緒に食べます。なので、ぼくもお粥でいいです」
かなみさんが作るものはだいたい美味しいし。お粥も例外ではない。
「わかりました。では用意しておきます」
「お願いします。じゃあぼくは初火の所に戻りますね。ごちそうさま」
「お粗末さまです」
階段を登るときもできるだけ音を立てないように気をつける。初火が起きたときに、ぼくが居なくなっていたら不安がるだろうし。
「……ぉ……ちゃ」
呼ばれた。初火が起きたらしい。少し駆け足で部屋へ向かう。
「おにぃちゃん、どこー?」
ガチャっとドアを開ける。
「ごめん、ちょっと下に行ってた」
見ると初火が体を起こしてぼくの姿を探していたようだ。
「もぅ、勝手にいかないでょ」
ぼくの姿を認めると安心したのか、体をベッドに預けた。
「寝てたからさ。ごめん」
額に手をあて、体温を調べる。朝より少し上がっているようだ。
「今しんどい?」
「ぅん。しんどい」
ごろんと初火がぼくの方に体を転がす。
「なにかして欲しいこと、ある?」
「手、にぎって?」
要望通り、手を握る。初火の熱っぽい体温がぼくへと伝わる。
「……きす」
「キス?」
「うん、……そう」
「どこ?」
「どこでも、ぃぃょ」
唇を、初火の額にそっと触れさせる。手で感じるよりもより鮮明に初火の熱がわかる。
「これでいい?」
「くちびるがよかったのに」
「えっ? どこでもいいって言ったじゃん」
初火の言葉に、苦笑いで答える。それはちょっとハードル高い。
「さっしてほしぃ」
「元気になったらしてあげるよ」
初火はうーん、と唸って枕に顔を埋めた。




