トイレ
かなみさんが下がったあと、氷枕をセットすべくタオルで巻く。
「初火、ちょっと頭あげるぞ」
そっと初火の頭に手を添え、ゆっくりと持ち上げる。
「んー」
その間に氷枕を入れる。
「つめたーい」
初火が気持ち良さそうに小さく呟いた。
「寝れそうだったら寝るんだよ」
そう促すと初火が、ぼくの腰に手を回してきた。
「いっしょにねよー」
ぼくを倒そうとしてかくいくいと引っ張ってくる。
「二人だと、このベッドじゃ狭いよ」
「えー、くっつけばへいきだよ」
初火が端によってぼくのためのスペースを空ける。
「ダメ、ちゃんと真ん中で寝なさい」
「んー、じゃあもうちょっとこっち」
ポンポンと初火が枕元を叩く。深く腰掛けろということらしい。
「これでいい?」
「うん」
深く座り直すと初火は満足したらしい。
「てー」
「ん? 手?」
次は手のひらを布団からちょこんと出して、ひらひらさせている。
「んー」
初火が手のひらをぐーぱーさせ始めた。
「握ってって?」
「んっ」
「はいはい」
初火の手に自分の手を重ねる。すると初火が指を絡めてきた。
「あのねお兄ちゃん」
初火は絡めたぼくの手を自らの頬っぺたへあてがった。
「さっきも言ったけど、おにぃちゃん嫌いっていうのウソだからね? だから、ここにいてね?」
「さっき聞いたよ。大丈夫、ここにいるよ」
初火が望むのなら、いつまでもその隣に。
「だから安心して寝てな」
ぎゅっと手を握る。こたえるように応えるように、初火も手を握り返した。
「ん……、んー」
「あぁ、初火起きた? よく眠れた?」
「ぅんー」
「お昼前だけど、何か食べられそう?」
「ぁぅー」
唸って初火は少し考えるように間をとってから呟いた。
「おしっこしたぃ」
「あぁ、わかった。歩ける?」
「おんぶして?」
ぎゅつと初火に抱きつかれると、汗とシャンプーの混じった女の子の匂いが鼻孔を撫でた。
「じゃあいくよ」
初火を背にのせる。心地のよい重み。心地のよい暖かさ。背中に広がるそんな感覚が愛しい。
「れつごー」
ぐでん、と頭を下げた初火が声を出す。
「ほいさっ、と」
トイレのドアを開けて初火を座らせる。しかし例によって初火は、握った服の裾を放さない。
「ぱんつ下ろしてー」
……うん、もういいや。そっと初火のパジャマに手を添える。これは一気にパンツごといっちゃっていいのだろうか? それともパジャマを脱がした後にパンツをいくべきなのだろうか。
「はやくー」
「下ろすからちょっと腰上げて」
「ん」
一気にいった。いいよね、省エネだし。
「じゃあ」
出ていこうと踵を返すとまたも裾を引っ張られた。
「ここでまっててー」
「……ん」
もう何がなんだか。目をそらすのも馬鹿らしくなってきたからじろじろ見てやろう。
「………………(じぃー)」
「……おにぃちゃん、あんまりじろじろ見られると出なぃ」
顔を真っ赤にして、潤んだ瞳の上目遣いで弱々しく抗議する。トイレを済ませた初火は少し熱が上がったように見えた。
「だっこー」
「はいよ」
トイレからの帰路は抱っこで運んで欲しいとの事だ。
初火が正面から抱きついて、首に手を回してきた。 初火の膝裏に手を入れ、腰を支える。
「よっと。これでいいですか? お姫様」
「うん。へへへ」
ご機嫌そうだ。可愛いな。
新作「ヴァンパレード」投稿しました。
よかったら、そちらもお楽しみ下さい。




