風邪
三連休も今日で最後だなぁ、とか考えつつ朝のニュースを見る。終わると時刻は九時。
「……そろそろ部屋へ行くか」
初火は案の定起きてこなかった。理由は恐らく、
「おっ、丁度メール来た」
『from初火 件名なし 本文、きてー』
「かなみさん、初火からメール来たんで行ってきますね」
「初火さま、やっぱり風邪引いちゃいましたか?」
「ええ、たぶん」
初火は旅行とかから帰ってきた次の日は気の緩みからか大概風邪を引く。薬膳を出したけどあんまり意味なかったな。
階段を上って初火の部屋へ向かう。扉を軽くノックする。
「初火、入るぞ」
声をかけて扉を開ける。豆電球がついているだけで部屋のなかは薄暗い。
「おにぃ……ちゃ」
枕元に座って初火の額に手をあてる。んー、37度6分ってとこかな。
「しんどいよぅ」
ぼくの上着の裾を掴んで弱い力で引っ張ってくる。
「氷枕持ってくるから、ちょっと待ってて」
立ち上がろうとするが初火は裾を放してくれない。
「初火?」
座り直すと初火はぼくの腰に顔をくっつけてきた。
「いかないで」
「すぐもどってくるよ。他に何か欲しいものあったらついでに持ってくるから。食欲はある?」
「いっちゃだめ」
「……初火はぼくの事なんかキライだから、いなくても平気だろう?」
昨日のことを言ってみる。我ながら病人に何してるんだよって感じである。
「うっ……ひっく」
初火が顔を押し付けたまま、震えだした。
「ごめ……なさぃ。そんなのうそだよぅ。おにぃちゃ、がメール返してくれないからさびしかっただけで……ごめんなさい」
「もういいよ、気付かなかったぼくが悪いんだから」
そっと初火の頭を撫でる。汗で湿っぽくなった髪が手に絡みつく。
「かまってほしかっただけなの。……ちょっとふあんにさせてみたかっただけ。ホントにごめんなさい。……おにぃちゃんおこってる?」
「怒ってないよ、ちょっと寂しかったけどね。じゃあ、ちょっと取りにいってくるね?」
そう告げて腰を上げようとしたが、またもやか弱い力に阻まれる。初火は腰に当てた顔をフルフルと振っている。
「いかないで」
弱々しい声でそう呟く。
「おにぃちゃんがいないと、さびしくてしんじゃう」
我が妹はウサギか? まぁ可愛さはそれ以上だけれども。
「わかった。かなみさんに持ってきてもらうよ」
ケータイから内線で家の固定電話に繋げる。
『はい、もしもし』
「かなみさん? 初火の部屋まで氷枕とタオル、飲み物持ってきて貰えますか?」
『かしこまりました。少々お待ちください』
電話が切れる。
「初火、食べたいモノない? 一応、胃に何か入れておいた方がいいと思うけど」
「いらないー」
「そう、お腹空いたら言ってね」
「ぅんー」
コンコン、と部屋の扉が叩かれる。
「どうぞ」
「失礼します。氷枕とタオルと飲み物です。スポーツドリンクですけどよかったですか?」
「ええ、ありがとうございます」
お礼を言って、かなみさんから頼んでいた物を受けとる。
「初火さまの御加減はいかがですか?」
「熱があるみたいで、少ししんどそうです。ぼくが付いときますんで大丈夫ですよ」
一日中付きっきりで看病するつもりだ。
「そうですか。何かあったら内線で知らせて下さいね」
「わかりました、お願いします」
そう言ってかなみさんには下がってもらった。かなみさんの前では初火も甘えづらいだろうし。
明日から新しい作品を投稿するつもりなので、そちらもよかったら御一読下さい。
「ふれあい」はもう少しだけ続きます。




