デザート
「あとは、デザートですね。どの料理も凝っていて、とってもおいしかったです」
そんな話をしつつのコース料理終盤、入り口に見知った人物が見えた。
大勢の人がいる中でも見つけることができたのは彼女の優れた外見だけでなく、纏っている雰囲気というか気品というかそんなもののおかげだろう。
視線に気付いた彼女がこちらへ向かってきた。
「こんばんは、明坂くん。こんなところで会うなんて奇遇だね」
「こんばんは、月見里先生。先生も御食事ですか?」
声をかけてきたのは月見学園の養護教諭である月見里木舞先生だった。
「いや、私は視察を含めた様子見にな……そちらの方は?」
伺うように木舞さんがかなみさんへ視線を向けた。
「ああ、こちらは……」
言いかけたところで本人が先に自己紹介を始めた。
「はじめまして、明坂家の使用人の不知火かなみと申します」
「不知火……使用人でしたか。私は月見里木舞、明坂君の通う学校で養護教諭をしています。よろしく」
かなみさんが深々と頭を下げたあと木舞さんも少し頭を下げた。
「ふむ」
自己紹介をし終えたあとも木舞さんはかなみさんを見ていた。
「あの、なにか?」
不思議に思ったかなみさんが木舞さんに尋ねる。
「あぁ、いや、なんでも。そういえば今日は泊まらないのかい?」
はっきりとしない返答を濁すように、木舞さんはぼくに質問を被せた。
「いえ、食事だけのつもりですが」
「そうか、用事がなければ是非とも泊まっていって貰いたいのだが」
「いいのですか?」
木舞さんの提案にかなみさんが食いついた。
「でも、連休で満室なのでは?」
魅力的な提案であるが、連休中に予約なしでの宿泊はいくら何でも無理だろう。
「そんなことはないよ。二部屋くらい融通できる。そこで頼みたいのだが、実は私は次の仕事があってもう十分もここに居られないんだ。しかし、それだとホテルの部屋を見る余裕がなくてな」
理解した。かわりに調査を頼みたいのだろう。
「調査と言っても感想を聞かせてくれる程度でいいよ。不満な点や改善点を教えてくれればなお良いが」
「わかりました引き受けます」
滅多にない機会なので、ご厚意に甘えよう。かなみさんもそれを望んでいる様だし。
「ありがとう。フロントに伝えておくよ。」
「助かります。木舞さんもお疲れの出ませんように」
「ああ、休み明けに学校でな。陽火」
去ろうと振り返った木舞さんだが何か思い出したように首だけで振り返りった。
「そうだ、お祖父様が陽火に会いたがっていてな。また今度都合が良いときにでも家に来ることを考えておいてくれ」
「お祖父様って理事長ですか……」
「まぁ、そんなに深く考えなくていい。顔を見せる程度だ」
そう言うと木舞さんは颯爽と去っていった。
理事長か。正直遠慮したいな、怖いし。
「ご主人さま、月見里先生とは随分と仲がよろしいのですね」
かなみさんが訝しむように尋ねた。 確かに、最後は気を抜いて名前で呼びあってしまったし。変に思うのも無理はない。
「父親関係で入学以前からの付き合いなので」
「そうですか、旦那様の……」
納得したように頷くかなみさん、表情は優れなかったがデザートが来ると同時に明るくなった。




