ぼくのメイドさん
帰宅後、晩御飯は店を予約している事をかなみさんに伝え部屋へ戻った。
「やっぱ、外出すると疲れるなー」
ボディバッグを放りだし、ベッドへと転がる。
根っからのインドア派のぼくはパーソナルスペースも狭く電車とかでもかなりのストレスなのである。
「つー訳で惰眠ー」
ストレスを感じると反動のように独り言が増える。
「ねみー」
そんなことを呟いたり思ったりしつつ、意識を思考の海へと沈めた。
「……ご主……ま」
微睡みの中で声が聞こえた。慣れ親しんだ女の人の声だ。 優しく、ぼくを包み込むように響く。
「……ご主人さま? 起きられますか?」
うっすらと片目を開けると、ベッドのヘリに腰掛けたかなみさんの姿。
……正確にはかなみさんの太ももが視界を埋めた。
「…………陽火くん」
不意に、呼ばれなれない呼び方をされて少し驚いた。眠気の方が勝っていたため反応はしなかったが。
「まだ、寝てる。……可愛い」
かなみさんの細い指が、ぼくの髪をそっとなぞった。そして、髪から首筋へ。
ゾクゾクしてきた。かなみさんはぼくが起きている事に気付かず、撫でたりなぞったりを続ける。
「ふふっ、起きないなー」
普段はあまり耳にしない楽しげな声だ。覚えていないから判らないが母親がいたらこんな感じなのだろうか。直に愛情に触れるようなこの感覚。
寝返りをうってかなみさんに近付く。太ももに息がかかるくらいの距離。
「んっ、くすぐったい」
かなみさんが身を捩る。その反応が楽しくて、もっとイタズラしたくなる。
「ひゃっ!」
ぼくの舌が柔らかく滑らかな彼女の太ももをなぞると、彼女はそんな可愛らしい声を出した。
「起きてたんですか? ご主人さま……」
顔をうっすらと赤らめたままかなみさんが居住まいを正す。
「起きてましたよ。今のは仕返しです」
そう言ってゆっくりと体を持ち上げる。時計を見ると五時前。……三時間近く寝てたのか、寝過ぎだな。
「少し早いですが、そろそろ行きましょうか」
放りっぱなしのカバンを拾ってかなみさんを促す。
「……イジワルです、ご主人さま」
かなみさんの呟きは聞かなかった事にした。




