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ふれあい  作者: 日寝月歩
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保健室へ行こう(提案)

 ふと、思い出す。

 そういえば思い出に浸ったせいで忘れていたが、今朝のことで水萌の足には少し擦り傷ができていたのだ。

「水萌、一応よっておこうか」

校舎に入った辺りで水萌に声を掛けた。

「よるって、どこに?」

「保健室」

 瞬間、きょとんとしていた水萌の表情が豆鉄砲を食らったかのように一気に驚きに変わった。

「えぇっ?なんで、そんなっ!」

 水萌は首をぶんぶんと振っている。その顔は色白の彼女の肌と相まってとても赤さが目立つ。なんか赤べこみたい。

 歯医者に行くわけでもあるまいに、そんなに保健室が嫌なのか。

「嫌じゃないけど、それはまだ早いっていうか……」

「するなら早いに越したことはないだろ」

 たいした怪我でなくても放っておいては悪化するかもしれない。

「でも…… まだ、これから学校もあるし。するなら放課後にしない?」

「それじゃあ遅いだろう? これから学校だからこそちゃんとしておかないと」

 すると水萌は俯きつつ小声で

「うぅ、した後に授業なんて受けられないよ…… 陽火くんがこんなに積極的だなんて」

 積極的というより心配性なだけなのだが。ぼくが負わせた怪我なのだし。

「そんなに嫌なのか?」

 なかなか首を縦に振らない水萌を不審に思って尋ねる。

「嫌じゃないんだけどね、なんていうか…… その、そうゆーことは時間があるときにゆっくりしたいなーっていうかね…… それにあたし、したことないし」

 朱色に染まった頬のままで困ったような笑みをして見つめてくる水萌。

 したことないというのは保健室を利用したことがない、ということなのだろうか?

 そんなに身構えなくても気軽に利用できる場所なのに。

「緊張しなくても大丈夫だよ。 HRまでまだ時間もあるし……」

「でもそういうのって、時間かかるんじゃないの? 一、二時間くらい」

 この子は保健室で手術をするとか考えているのだろうか?

「そんなにはかからないよ、5分もあれば済むと思う」

「そんなに早いの!?」

 消毒して絆創膏を貼るくらいならそのくらいだろう。

「まぁ、慣れてるし」

「慣れてるの?」

 唖然という表現が一番しっくっりくるであろう顔で聞き返してくる。

 一応、小学生の頃からずっと保健委員だったからな。 手際の良さには自信がある。

「先生が居ないときはよくしてるよ」

「よくしてるの!? 先生が居ないときを狙って!?」

 狙ってというか、先生が居れば先生がするからな。 でもまぁ、たまに

「先生居てもすることあるけど」

 仕事押し付けられるし。

「先生の前でするってこと!? どうゆうことなの!? ていうか相手は!?」

 晩御飯にカレーが出てきたときの小学生のような最高潮のテンションでで突っ込み続ける水萌。

 なぜこんなにも食いついてくるのだろうか、保健委員の仕事に興味を持ってくれたのならとても嬉しいことなのだが。

「どういうことって……先生が居ないときは保健室にいる保健委員が手当てをするんだ。もちろん怪我した人が相手だよ? ぼくの場合は先生が居てもやらされることがあるってだけで」

 養護教諭は一人しかいないから人が多く来る日にはぼくに多少なり仕事が回ってくる。

 入学三週間しか経っていないが、クラブの仮入部などの影響かこのような事態は既に二回ほど経験している。

「え?」

 水萌が間の抜けた声をあげた。

「え?」

 それにつられるかのようにぼくも疑問の声をあげる。

「手当て?」

「うん、手当て」

 水萌はいったい何を勘違っていたのだろう、というか勘違いのしようがない話題だったと思うのだけれど……

 学校に着いてからこの話しかしていないのに。

 答えると水萌は赤かった顔をさらに赤くして俯いた。

 下げた顔からは湯気が立っているようにも見える。

「……じゃあ、お願い。手当て」

「うん」

 顔を伏せたままの水萌を伴ってグラウンドに面した校舎に位置する保健室へと向かう。

 しかし、どうしたのだろう? さっきから水萌に話しかけても『あ』とか『ん』としか返事をしてくれない。

 心配だ。

 水萌がしていた勘違いが原因なのだろうか……

 後で誰かに相談してみるとしよう。


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