買い物
いい感じに時間を潰したので現在の時刻は十時五分前。ショッピングモールの入り口には結構な人数が集まりだしていた。
「最近できただけあって、かなり人多いですね」
目測だけど百人くらいか? とりあえず多いから百って数字が出てきたけど、このくらいの人数になると全然読めないんだよな……。
「いっぱいいますね。休日だから余計に多いのかも……」
かなみさんはそうい言ってぼくとの距離をさらに縮め、袖をキュッと掴んできた。
「迷子になりそうなのでこうしてていいですか?」
「いいですよ。一度はぐれたら再会するのは大変そうですから」
かなみさん携帯持ってないし。多分、持ってても使えなさそうだし。
「開いたみたいですよ」
人の波がモールの中へ吸い込まれていく。かなみさんがぼくの袖を掴む力を少し強めつつ、そう言った。
「とりあえず、服を買いましょう」
他の客からだけでなく、店員さんからの視線も気になる。最優先事項として、かなみさんに服を買って、今日一日はそれで過ごしてもらおう。
「はい、似合っているか見てくださいね」
「ぼくは洋服についてはあんまり詳しくないですけど……」
自慢じゃないが初火が居なきゃ、自分の服さえ選べるかどうかも怪しい。
「ご主人さまの好みで選んで下さったら結構ですよ。その通りにしますから」
……店員さんにアドバイスしてもらおう。きっとそれがベストな答えだ。
「それにしても、店自体が多いからそこから決めないとですね」
このフロアだけで大小あわせて五つもある。どこもそれなりに人気のようだ。
「かなみさんはどこか気になるところはありますか?」
残念ながら、ぼくは違いが判らないのでかなみさんに丸投げ。それにこういうことは、本人が決めた方がいいだろうし。
「そうですね、あそこの店に入ってみてもよろしいですか?」
かなみさんが差したのはこのフロアで二番目に大きい、女性専用の洋服店だった。
「いいですよ。行きましょうか」
答えるとかなみさんはぼくの袖を掴んだまま店へ向かって行った。 足取りから察するに、気になるものがあったのだろう。
「どれがいいですか? 気に入ったのがあったら言ってくださいね」
どうせ、父さんのカードで払うから金額は気にしなくてもいいですよ。うーん、 我ながらなんというすねかじり。
「えっと……ご主人さまに選んで頂きたいのですが――」
「ぼくにですか?」
難しいな。流行りものとかよくわからないし。
「ご主人さまが選らんものなら何でもいいですよ」
……つまりは、ぼくが着せたいものを何でも着てくれるってことか。
いや、別にやましいことなど考えてないけどね?
ただ、かなみさんっていつも丈の長いメイド服を着てるから、たまには趣向を変えて欲しいというかね。
正直に言おう。脚を見たいのだ。
なんて心中でセルフカミングアウトをしていると、かなみさんが店員さんに声をかけられていた。
テンプレートに「なにかお探しですか?」みたいな感じで。
相手がメイドでも同じように対応するんだ。




