お出かけ
朝食後ぼくたちはそれぞれ自室に戻り、出かける用意をした。……といっても、かなみさんはともかくぼくは特に用意することなんてないんだよな。
せいぜい羽織るパーカーを選ぶ程度だ。
かなみさんが用意している間、ぼくは時間を持て余していたので週明けの時間割でも合わせようとカバンを開いた。
「…………」
忘れていた。臨視から本を借りていたんだった。丁度良く暇だし少し読んでみるか。二冊あるうちの一冊を選んでページをめくる。
こっちは教室でちらっと見た、兄妹を題材にしたものらしい。これからの生活においてこの本から何か役立つ情報が得られれば都合がよいのだけれど。
数ページ進んだところで部屋の扉がノックされた。
「用意が済みました。わたくしはいつでも出られますよ」
かなみさんの用意は予想していたよりも早かった。ぼくは暇なときにでも読もうと本を二冊とも、ボディバッグへと突っ込んだ。ついでに財布とケータイも。
「分かりました。じゃあ行きましょうか」
応えて、ドアへ向かう。
部屋を出てびっくり、かなみさんはメイド服のままだった。
「かなみさん……、もしかしてその格好で行くんですか?」
これじゃあ少し、どころかかなり目立つ。
「はい、そのつもりですけど。普通のメイド服に着替えた方がよろしかったでしょうか?」
どちらにせよメイド服は変わらないんだ。ご近所ならいざ知らず、隣町ですからね?
「でもわたくしは、メイドですし。メイド服以外持っていませんし……」
なんと! 衝撃の事実だ。
「じゃあ、これまでスーパーとかへ買い物に行く時も……」
「メイド服です」
「銀行から、お金を引き出すときも……」
「メイド服です」
「いつでもどこでも……」
「メイド服です」
なんということだ。かなみさんがまさか私服を一着も持っていないなんて。確かにメイド服以外のかなみさんを見たことは無いなと思いつつも、買い物に行くときくらいは着替えているものだと思っていた。今日はかなみさんに服を買ってあげよう。そう心の中で決めた。




