はなしあい
(よし!)
取っ手を下げ、ゆっくりとドアを押す。そこには、……あれ? 初火は――いた。
多分これだ。
ぼくの布団がこんもりとしている。
「初火?」
待ちくたびれて寝ちゃったのか? せっかく気合い入れたのになんだか拍子抜けするというか、もっとシリアスな感じの話し合いの場を想定していたので……期待外れ、とも違うがまあ気が抜けた。
「初火、起きられるか? ていうかここ、ぼくのベッドなんだけど」
布団の上から少し初火の体を揺する。寝ているのを起こすのはかわいそうだが、今晩話すと約束したし。
ぼくも、そして初火自身もそれを望んでいるだろうし。
するとこんもりと膨らんだ布団の端から、初火の指が出てきた。
その細い指が少しだけ布団をめくりあげて、初火が可愛らしく顔を出した。
「おきてたよ」
少しだけ、不機嫌そうだった。寝起きのときに見せる、眉を顰め視線を合わせようとしない表情。
そのちょっぴり張った意地がまた可愛らしく、分かってはいるが聞いてみたくなる。
「じゃあ、なんでぼくの布団に入ってたのさ? 眠かったんでしょ?」
初火はいつも寝るのが早い。小学生でも起きているだろう時間にはもう目をこすって、欠伸をかみ殺しているしている。
それを悟られるのが恥ずかしいのか、よく限界までソファに座ってテレビとにらめっこをしている。勝率はかなり低いのだが。
いつも船を漕いだタイミングで、かなみさんに促され部屋に戻っている。
……でも、いくらなんでもまだ八時過ぎなんだけど。合宿の消灯って大体、十一時とかだと思うのだが大丈夫だろうか。
「ねむくないよ。おふとんあっためてあげてただけだよ」
平仮名ばかりで喋っているせいで、せっかくの秀吉ばりのご奉仕が台無しだ。
まぁしかし、ここは素直にお礼を言っておこう。可愛い初火の可愛い言い訳を立ててあげようじゃないか。
「そうかい。ありがとう」
手を伸ばし初火の頭を撫でようと――したがやめた。拒絶されるのが怖かったのだろう無意識に、伸ばした手が引っ込んた。
「じゃあ、話そうか」
それが終わってからもう一度手を伸ばそう。伝えたいことを伝えて、それを初火が受け入れてくれたら。




