帰り道
「こっちだっけ?」
「そうだよ、覚えてたんだ?」
水萌とは途中まで同じ帰り道である。その先もぼんやりとはわかる。
「公園までは自信あるけど。水萌の家は一回しか行ったことが無いからな……。次はこの交差点を右だっけ?」
「ううん。そっち通るよりもこっちから行った方が近道なんだよ」
そういって後ろ向きで水萌が道を示す。
そのときだった、後ろ向きのために信号が赤に変わったのが気づかない水萌はそのまま横断歩道へと足を進めた。
「危ない!」
叫び彼女へ手を伸ばす。
「えっ?」
水萌の視界に飛び込んできたのは、青になったことでスピードを上げた
――トラック。
焦った顔の運転手が急ブレーキをかける。
ゴムのタイヤがアスファルトに擦れる甲高い音が交差点に響き渡る。
ぼくの手が水萌の細い腕を捉えた。
(間に合え!)
目を閉じ握った手に力を込めて引く。
…………ゆっくりと、目を開けると数瞬前まで水萌がいたところにトラックがあった。
「水萌!」
……は、ちゃんと腕の中にいた。目を閉じ体をこわばらせ、だけど無事だ。
(よかった……)
一息つくと、四十代くらいのトラックの運転手が窓を開けて大声で聞いてきた。
「大丈夫か、怪我はなかったか!?」
「大丈夫です。ご迷惑をおかけしてすみません」
「怪我がなかったらそれでいい。気をつけてな」
そういってトラックを走らせた。
水萌はまだぼくの腕の中で震えている。
「こゎ……かった」
目に涙を浮かべ、ぼくのシャツをすがるように握っている。その水萌の小さな肩を抱き頭を撫でる。
「もう大丈夫だよ。でも、ちゃんと前を向いて歩かないとだめだろ?」
少しきつくなってしまったかな。
「……はい、気をつけます。ごめんなさい」
「うん、じゃあ帰ろう。歩ける?」
首を横に振る水萌。
「腰ぬけちゃったみたい」
こうしてぼくは再び彼女をおんぶすることになった。
水萌のはやっぱり気になる大きさだった。何のことかは言わないけど。




