昼休み
「疲れたー」
長い午前中も終わって昼休み。ほっと一息つく。
昼食はいつも保健室で食べている。しかし、今日は臨視のせいで行く気になれなかったので、教室の自分の席で弁当の包みを開くことにした。
ふたを開いたところで、水萌が自分の弁当を抱えて近づいてきた。
「めずらしいね。今日は教室でたべるの? おにーちゃん」
ようか は だめーじ を うけた。
「ダメだ、水萌。教室でそれはやめておこう、さすがに」
喜びに沸きあがる心を抑え、水萌をたしなめる。
「あはは、冗談だよ。陽火くん」
今朝、冗談にならない事態に陥ったのだが……。今晩どうしよう。
あと後ろの席から殺気じみた視線を感じるし。
そんなことは気にしていない様子の水萌は近くからイスを拝借し、ぼくの目の前に座って向かい合う形で机に弁当を広げた。
二人分の弁当を置くとこの机は少し狭いのだが。
「一緒にたべていいよね?」
「いいよ」
水萌、聞く前からもう食べる体勢だったし。
「ボクも一緒に食べていいかい?」
臨視が満面の笑顔でよってきた。
「いやだ」
「なんで!?」
「変態だからだ」
「ひどっ!」
言いながら臨視はすごすごと後ろの席へと戻っていった。
今回の迎撃は成功したようだ。
「じゃあ、食べよっか」
今のやり取りをなかったことにして箸を取る。
「うん。いただきます」
「いただきます」
水萌の弁当を覗くとサンドウィッチだった。ちなみにぼくのはかなみさん作、彩弁当だ。
「……弁当がサンドウィッチって実際はあんまり見ないよな」
「そう? うちはお父さんと、お母さんがパン屋さんだからよく出るよ」
「そうなんだ。……もしかして水萌の手作りだったりするのか?」
「うん、親二人とも朝早いからね。陽火くんのは?」
「ぼくのはメイドさんが作ってるよ」
すると水萌は驚いた様子で
「メ、メイドって?」
「家政婦さん。家事とかしてくれる人」
「陽火くんの家ってお屋敷だったりするの? お金持ち?」
「いや、普通の一軒家だよ」
お金持ちかと聞かれたら、まあそれなりだ。
「へぇ、メイドさんが居るなんてそれこそ実際あんまり聞かないよね」
「けっこう珍しいみたいだからね」
我が家のちょっとした自慢である。
「やっぱり、メイドさんが作っただけあってすごくおいしそうだね」
「うん、うちのメイドさんは家事万能だからね。水萌のもおいしそうだよ」
「ありがとう。……ちなみに陽火くんのお弁当に入っている玉子焼きが、あたしに食べてほしそうなんだけどどうすればいいかなっ?」
目を輝かせて玉子焼きを見つめる水萌。ぼくも好きなんだけどな……
「ほしいならあげるけど」
「ほんとにっ!? じゃあ、お言葉にあまえてっ」
ひょいっと、玉子焼きが水萌の小さな手にさらわれる。
「うんっ、おいしっ。じゃあお返しに、あーん」
と、水萌がサンドウィッチを差し出してきた。
後ろからの視線が刺さる刺さる。あーんしなくてはいけないのだろうか。
しかし、まあいいや。意を決してあーんされた。
「む、うまいな」
かなり良い味だ。パンが特にうまい。オーソドックスなハムとタマゴのものだったのだが、マスタードが良いアクセントとなり、今まで食べたことがないくらいハイレベルなものだった。
「えへへ、ありがと」
誉められた水萌は少し照れくさそうにはにかむ。
「うん、こちらこそありがとう」
こういう風に食べる昼食もいいなあ、と思いながら昼食を済ませる。
「ごちそうさま」
「ごちそーさま」
その後昼休みが終わるまで水萌と二人で雑談をした。




