一 [5/15]
「何なら、まじめな話をしましょうか?」
「……なに?」
ソラの声色の変化に、与羽も青麗と話す時のような落ち着いたアルトの声を使った。
「青麗様はあなたに、これから夢見が巻き込まれるであろう大きな嵐に立ち向かう協力をしていただきたいと思うでしょう」
「知っとるよ。私は夢見の協力者『青炎の龍姫』与羽じゃもん。けど、『立ち向かう』か夢見らしくない言い回しじゃな。――雷乱」
与羽は自分の後ろを歩く長身の青年を振り返った。
与羽と同じように和服を着て、鳥の時の羽と同じように毛先にいくにつれて赤から黄色に色が変わる髪をもち、頭の上には一掴み羽根のとさかが残っている。目は炎のように赤く、肌は与羽にあわせて黄褐色だ。
「そうだな。夢見は平和・中立の民族だ。たまに数人が戦に介入したり、他の民族に占い師として雇われたりする事はあるが、一族全体が巻き込まれるような事はオレの記憶にもねぇ」
三千年以上生きたと自称する精霊の答えに与羽は鼻を鳴らした。
「しかも、相手は戦闘系ときた」
「与羽は協力してくれるんですよね?」
ソラが念を押すように尋ねた。
「考え中。今回のに首突っ込んだらいやな事が起こりそうな気がするんよなぁ。どう思う? 雷乱」
「やめとけ」
雷乱は即答した。
「う~ん、でもなぁー」
与羽は決められずにいる。
「こんぺいとう百年分でどうですか?」
ソラが口を開いた。
「こんぺ~と~? そんなんでつられるとでも――?」
与羽が口を尖らせる。
「いらないんですか?」
「まだいらんとは言っとらんし」
与羽は慌てて答えた。
「百年分ってどうするつもりなん?」
「毎月送ってあげますよ」
「もし、百年以内に私が死んだら?」
「その時はわたしが得をします」
「じゃぁ、あんたが百年以内に死んだら?」
「それはありえませんが、それでも送られるように遺書を書いておきましょう」
「……本当に食えん奴じゃな」
与羽はいまいましそうに言って、左ほほをなでながら再度考える。協力する場合のメリットとデメリット――。
短期的に見ればはるかにデメリットが大きいが、長期的に見ればそれなりの利益になるはずだ。そして、その利益は月日が経てば経つほど積み重なって大きくなる。
しばらく考え込んだあと、与羽は「分かった。協力しちゃる」と呟いた。
「ありがとうございます」とソラが言い、「本気で言ってんのか?」と雷乱がわずかに声を荒げる。
「本気じゃよ、雷乱」
与羽は答えた。
「夢見は私がこれから何をやるにしても、大事な情報源じゃ。できるだけのことはせんと。それに、やっぱこんぺいとうは欲しいじゃん。百年もおやつに困らんでええんで」
無邪気に目をキラキラさせている与羽に、雷乱は肩を落とした。
「即物的だなぁ、おい」
呆れたような雷乱の言葉に、与羽は短く笑い声をもらした。




