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一 [3/15]

「お久しぶりです、青麗(せいれい)様」


 数十分後、与羽(よう)は青麗と向かい合って座っていた。後ろにはソラが立っている。


「本当に久しいですね、与羽さん。こんな時に来てくださって、助かりました。 ある程度、今夢見がどのような状況なのかご存知なのでしょうが、情報交換もかねて夢見の現状をお教えしましょう。――ソラさん」


「はい、この半年間で領土への不法侵入が十四件。未遂が三十七件。領空侵犯が二十八件。前の半年と比べて三倍強になっています」


「まさか領空侵犯にうちらを入れとらんじゃろうな」


「それを入れたら二十九件になりますね」


 口元をゆがめて言った与羽に、ソラはいたってまじめに答えた。

 与羽は浅くため息をついて、青麗に向き直った。


「他にも何かありますか?」


「これはおそらくとしか言えませんが、予知を妨害されている可能性があります。精霊による長距離伝達もうまくいっていないようですし」


「そうですか」


 与羽は頷いた。


「それではこちらの情報を――。早速悪い話に入らせていただくと、最近夢見を襲っているのは、『暗黒の守護者』、二つ名だけはカッコいい暗鬼(あんき)とその同志ですね。集団名は分かりません。

 夢見を襲う目的も不明です。そう簡単に教えてくれるものでもないでしょうし。ただ、夢見には世界中の占い師を支援できるシステムがあるだけでなく、この世界自体を支える重要な場所でもあります。

 何にしても、奴らは夢見をつぶそうとしているようです。夢見の中枢、青麗様やソラ様をあぶりだす、もしくはおびき寄せるつもりらしいですね。

 夢見は今までずっと青麗様が頂点にいらっしゃいましたから、青麗様がいなくなれば夢見は容易に崩壊するでしょう。それを狙っているのです。

 ソラ様がいなくなれば、夢見の防御力は大幅に低下しますし。

 方法としては、夢見の守る四つのご神体に何かするというのが、私の話した語り部の占いでは一番多いようです。私は火攻めだと思いますけどね。最近火の夢ばかり見ますから。

 といっても、私の予知夢は虫の知らせ程度のものですからあまり信頼していただいても困ります。

 飛走(ひそう)輝希(キキ)師によると、風のご神木辺りが怪しいそうですが、日付までは分かりません」


 与羽は何とか夢見にあわせて落ち着いた声で言い、目の前に置かれた紅茶を口に含んだ。


「分かりました。日付はこちらで割り出してみせましょう」


「お願いします」


「それではもう重い話はお終いですね」


 声が急に明るくなる。


「与羽さん、極西(きょくせい)地方で鬼とヒトの共存を実現したアリサ女王についてどう思いますか?」


 青麗の深い群青の目は子どものように輝いていた。

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