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終 [3/5]

「しつこいな、あんた」


 与羽(よう)は笑う。

 その目がベッドわきの小机を向いた。スープが置いてある。


「それ、もらってもいい?」


「もちろん。一日以上寝ていたのです。空腹でしょう?」


 ソラがベッドわきの小机に置かれたスープを取り上げた。


 与羽は体を起こして、それをゆっくり口に運ぶ。

 小さく刻まれた野菜はよく煮込まれ、噛まなくても簡単に形が崩れた。薄味なのも、目覚めたての舌にはちょうど良い。

 しかし、何か物足りない。


「帰りたいな……」


 与羽は無意識に呟いた。

 口に出すと、向こうにいるであろう彼が差し出してくれるおかゆが懐かしくなる。


「まだ無理をしない方が良いですよ」


「わかっとるけど――」


 与羽はすでに遠い目をして、故郷に思いをはせている。


「俺は飛べるぜ」


 与羽の隣で赤い猫の姿をしてうずくまる雷乱(らいらん)が口をはさむ。


「じゃあ、明日の朝出るかなぁ……」


 そして与羽は、心配そうな顔をしたソラを見た。目元は見えないが、何となくわかる程度には彼とも長い付き合いだ。


「そんな顔すんなよ、ソラ。どーせ、夢見にはよく来るんじゃし。感謝しとるよ」


 与羽はそっと彼のほほを手の甲で撫でた。それをつかもうとしたソラの手はかわしたが……。


「じゃあ、もう一眠りするかな」


 スープを丁寧にたいらげた与羽は、ソラの差し出した薬湯を受け取った。

 ハーブティーのような甘酸っぱい匂いのする薬湯は、天力の安定と回復を促すものらしい。


「ありがとな。ごちそうさま」


 それを飲み干してソラに器を返し、与羽は再び横になった。


「いえ、ぐっすり休んでください」


 目を閉じた与羽に、「おやすみなさい」と呼びかけて、ソラは客間をあとにした。

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