終 [1/5]
「あんたの嫌な予感は終わったか……?」
目覚めた与羽が最初につぶやいたのはそんな言葉だった。目を開いた瞬間、陽光に染まったソラの銀髪が見えたせいかもしれない。
「はい。あなたは大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけあるか」
ソラに流し込まれた天力のせいで、まだ自身の天力の流れが安定していない。
天力の質は人によって異なり、違う人の天力を大量に受け入れると、自身の天力の質や量、流れ方が変わってしまう。
与羽はわずかにしびれを感じる手をゆっくり目の前まで上げて、そこに凝縮した天力で水を生み出そうとした。
しかし、指先が少し湿り気を帯びるだけ。小さなしずくさえ作り出せなかった。いつもなら造作もなくできる天力操作がうまくできない。
「……重症じゃな」
そうつぶやく与羽は呂律も曖昧だ。
「申し訳ありません。想像以上にわたしとあなたの天力相性が悪かったようです。応急処置はしたのですが……」
「ん~、それは分かる。天力はめちゃくちゃじゃけど、体は結構動きそうじゃし。気分もそこまで悪くない」
与羽はそう言って辺りをゆっくり見回した。
淡い色の木の壁と天井。窓のカーテンは開けられ、陽光が差し込んでいる。壁際におかれた本棚には、およそ就寝前の読書には向かなさそうな難しげなタイトルの分厚い本が並び、隅に置かれた机には多様な占い道具と一緒に戦闘時に奪われた流王が丁寧に置いてあった。
「……結構寝とったみたいじゃな」
ここは万年の夢。ソラ宅の客間だ。
暗鬼と戦った風の御神木から万年の夢までは、雷乱の翼でも半日はかかる。暗鬼と戦ったのは夜だったが、太陽の差し込む方向から考えて、今は昼過ぎ――、夕方に近い。
「ちなみに、丸一日と半日ですから」
「うわ……」
ソラの言葉に与羽は苦い顔をした。予想以上に長い間意識がなかった。
「暗鬼には逃げられましたが、それ以外のほとんどは捕まえられましたし、様々な後処理も青麗様と輝希師、あとわたしでやっておきましたから、ご安心ください。望まれるのならば、敵兵と会うこともできます」
「いや、それはええわ。あんたらに任せる」
与羽は小さく息をついた。




