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三 [9/11]

「あとで説明しろよ」


 与羽(よう)はそう釘をさしながら、ソラの後ろで守られるのが(しゃく)で、横に立つ。雷乱(らいらん)はその斜め後ろで攻撃のすきを窺っている。


「『漆黒を裂く真紅の矢 連珠の印 玉の原』」


 攻めに転じたソラの代わりに、与羽が守備のために守護の神をたたえる祝詞の一節を口ずさんだ。指先で触れた守護の神のお守りが赤い光を帯びる。

 与羽が一時的に張った結界に、暗鬼の攻撃が全て受け流される。ひどく視認しにくいかまいたちのような攻撃だった。


 かまいたちの間を縫って放たれたソラの矢は、暗鬼の杖に叩き落とされる。矢を追うように放たれた雷乱の雷と炎は瞬時に結界を張って耐えたようだ。


「守護の神のお守りと夢見最強――。……ちょっと、分が悪いかな」


 暗鬼は涼しい顔をしつつも杖を持っていない方の手で、はじめソラに刺された胸を押さえている。応急処置はしているのだろうが、万全の状態とは言い難いようだ。

 杖を持つ手にも、わずかにやけどが見えた。雷乱の攻撃も完全に防ぐことはできなかったらしい。


「ご神木を狙ってどうするつもりですか?」


 弓を構えたままソラが厳しく問う。


「その質問、ちゃんとした答えが返ってくるなんて期待してないね。あなたの心はさすがに長生きしているだけあって、ひどく読みくいけどそれくらいならわかる」


 暗鬼はそう笑んで、一歩後ずさった。

 その瞬間、後ろに下げた足を起点に陣が展開される。同時にソラが矢を放ったが、暗鬼を中心に巻き起こった風にそれた。与羽たちを攻撃するためのものではなく、暗鬼自身の身を守るための盾のようだった。


 暗鬼がすっと片手を前に差し出す。

 その手のひらに小さく陣が浮かぶのを見て、雷乱は与羽を抱えて横にとんだ。


 今まで盾として働いていた風が、指向性をもって与羽とソラがいた場所を襲う。

 翼ある姿で大きく弧を描いて飛んで攻撃をかわし切った雷乱は、「おろすぜ」と声をかけてから速度を落とすことなく与羽を放し、暗鬼との間合いを詰めた。

 そうしながら、自身の姿を変えて炎をまとった鳥の姿になる。人の姿よりも小さいが、その分すばやく、凝縮された白い炎は攻撃力も増してある。


 しかし、暗鬼もすばやく雷乱へ向けて手を突き出した。

 瞬時に広がった陣に雷乱は突っ込んだ。

 薄いガラスの割れるような澄んだ高音がして、結界を突き破る。引き裂かれた陣の残骸が淡い翡翠色の糸の断片になって雷乱の後で尾を引いた。

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