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三 [8/11]

「っつ、くっ!」


 叫んだのは暗鬼(あんき)

 ソラのナイフは暗鬼の胸に深々と刺さっていた。


 暗鬼が大きく後ろに跳んで退く。

 ソラはそれに洋弓で追い討ちをかけた。


 暗鬼が杖で地面に小さく円を描いた。次の瞬間その円を始点に、細い光が地を這い、複雑な模様を形作る。

 それが倒れた与羽(よう)の体の下まで広がり、ソラがすばやく与羽と暗鬼の間に飛び込んだ。


 その間に与羽の腕をつかむ者がいた。


雷乱(らいらん)……」


 その熱と気配でわかる。

 与羽はわずかに安堵の表情を浮かべた。先ほどソラのナイフを防いでくれたのも彼だろう。


 ソラと暗鬼の間では、激しい爆発が起こる。ソラが洋弓で矢を放ってから瞬きする間もなかった。

 矢は暗鬼に届く前に爆風で吹き飛び、ソラの纏う黄色の布が大きくはためいた。


 その時には、暗鬼は新たに杖の先で半円を描いている。


「大丈夫ですか? 与羽」


 声をかけながら、ソラはボウガンを暗鬼のほうへ突き出した。

 ボウガンに刻まれた模様がソラの送り込んだ天力で白く光り輝く。いくつもの円を連ねた守護の神をたたえる印だ。

 暗鬼の放った先ほどよりも攻撃力と指向性の高い光の矢がソラの張った結界ではじかれた。


「陣の展開と発動が正確で非常に速い。とても優秀な陣術使いですね」


「陣」と呼ばれる模様に天力を流し込むことで攻撃、回復、召喚など何かしらの効果を得る術式を「陣術」と言う。

 普通陣術を行うときは、紙などにあらかじめ描いておいた陣に必要な時に天力を流し込んで発動させるのみの状態にしておいたり、ほぼ完成状態の陣にその場の状況に合わせてわずかな加筆をして発動させるだけにしておいたりすることが多い。

 陣術を用いて強力な術を行うためには、それだけ複雑で巨大な陣を描く必要がある。しかし持ち歩ける陣を描いた紙には限界があるため、陣を頻繁に使って戦う陣術使いは少ない。

 その中でも、暗鬼のようにその場で陣を描き、発動させられる。しかも、陣の描き始めから発動までの時間が一秒にも満たないような術師はごくまれだ。ソラが称賛するのもわかる。しかし――。


「そんなこと言っとる場合か! というか、どういうことな!?」


 与羽は怒鳴って何とか体勢を立て直した。先ほどまで与羽に激しい攻撃を加えていたはずのソラが、何事もなかったかのように与羽と共闘の姿勢を見せている。


「防戦ばかりはつらいですからね」


 しかし、ソラはそれには答えず洋弓を構えた。新たに暗鬼の陣が足元に広がっていくことにも無頓着だ。

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