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三 [7/11]

「あんたが暗鬼(あんき)かっ?」


 与羽(よう)は怒鳴りながら、彼に殴りかかった。流王も(みお)もない。使える武器は自分の身一つだ。


 彼はそのこぶしを優雅な動作でかわした。


「そうだけど、いきなり殴りかかってくるって、君は今までどういう教育を受けてきたの? ただの通りすがりだったらどうしてくれるの?」


「こんな時間にこんなところをうろついとるそいつが悪い」


「なかなかひどい事言うね」


 暗鬼が笑みを深める。綺麗な笑みだ。


 与羽はその顔を遠慮なく蹴ろうとした。しかし、杖を握る手に止められる。


 長さ百三十センチくらいの杖の一振りで、冷気を帯びた天力が与羽を包み込んだ。この杖が人を操る能力と関係しているらしい。


 しかし、与羽は操られなかった。


「守護の神のお守りだね。なるほど、小賢しいな。まぁ、君くらいなら操る必要もないかな?」


 与羽のほほを矢が掠める。

 ソラがもう追いついてきた。澪と蒼竜の攻撃はほとんど効いていないらしい。


 ソラに気を取られた隙に、暗鬼が殴りかかってきた。意識を奪うためというような、やさしい攻撃ではない。

 身をよじって急所だけは避けたが、ベキリと嫌な音がした。激痛とともに右腕の骨が折れた。


 ひるんだために、後ろからのソラの矢が避けきれず、肩を突き抜けてゆく。

 与羽はやむことのない攻撃をかわしながらも、左手で折れた腕を掴み、天力で応急処置をする。

 切り傷ならすぐに治せるが、骨折は無理だ。右手を動かせるようにするのが精一杯。


 蒼竜が応戦するが、払いのけられ何度も水を散らして天力だけが消費されてゆく。


 暗鬼とソラに挟まれて、前後から攻撃が来る。暗鬼に集中すれば、矢が掠め、ソラに集中すれば背骨を叩き折られかける。

 白銀はどうしてしまったのか、現れない。『ソラは任せろ』と言ったくせに。


 ソラのナイフを避け、暗鬼の腹を蹴る。暗鬼に足を掴まれ、引き倒される。

 振り下ろされたナイフを右腕を犠牲にするつもりで弾き、暗鬼に掴まれなかった方の足に水を纏わせ、与羽の足を掴んだ腕を突き刺す。


 自由になった両足をそろえて、腹筋と天力で体を逆立ちさせ、ソラのあごを蹴り上げる。


 暗鬼の足が、地面についていた与羽の手を払った。

 頭から落ちてもおかしくない高さだったが、与羽は体を丸め、風で自分を包み込み四肢で着地した。


 その背をソラが踏んだ。

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