三 [5/11]
「……ッ、流王!」
与羽は叫んだ。これが流王にかけられた最後の封印を解く合図。
流王からあふれ出る水が与羽を包み込む。
与羽を踏んでいるソラの足に、水が凶悪な牙をむき出して襲い掛かる。
ソラの足が退いた。
水が与羽の全身を包み、与羽がゆっくりと立ち上がったところでそれが鋭い青に輝く流王へと収束する。
ソラの傷はすでに塞がっていた。
洋弓を引き、上空に射る。
「まずい、分裂するぞ!」
雷乱と交代して、飛んできた白銀が叫ぶ。
白銀の言った通り、矢は空中で髪の毛ほども細い針に裂け、降り注いだ。
与羽は流王を開き、むちのようにしならせた水で弾き飛ばしたが、与羽のまわりの地面には無数の針が刺さっている。
ソラがナイフを手に飛び出してきた。金属と革で作られた長靴を履くソラには、細くとがった針など障害にはならないらしい。
はだしの与羽はそうはいかない。
ソラのナイフを流王のかなめについた鎖――澪で受け止めて――。
ピキン、と澄んだ音がした。与羽の右手から鎖が抜ける。
澪が切られた。初めての事だったが、すぐに分かった。
澪には長さを調節するために、一ヶ所だけ守りの呪文が彫ってない所がある。それを見極めて切断できる人などいないと思っていたのだが……。
しかも、流王が奪われてしまった。ソラの矢に射抜かれ与羽の手をすっぽ抜けた。
天力の消費が激しいのでやりたくなかったのだが、やむを得ず風を操り宙に立って回避する。
「白銀!」
叫ぶ。
「あんたは、自分の主人に楯突く勇気があるか?」
「俺とソラの友情を甘く見んな。ソラが間違っているときは全力でたしなめさせてもらうさ」
白銀がニヤリとしながらソラに後ろから殴りかかる。ソラは天力でそれを弾き上げ、与羽にはボウガンを撃った。
与羽はそれを無言無動作で止めようとしたが、すぐに止まらないことを悟り、回避に転じる。
しかし、回避しきれず、矢が背を掠めた。血と髪の毛が散る。もう髪の毛を拾う余裕はない。
また飛んできた矢に与羽は首から提げたお守りを握り締めた。
「守護の神、玉苑。私を守れ」
命令口調だったが、玉苑はちゃんと与羽を守ってくれた。矢が弾き飛ばされる。




