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一 [1/15]

 ソラの属する「夢見(ゆめみ)」は、元予知の女神青麗(せいれい)率いる占い集団だ。

 万年の夢はその中枢。丘を「万年の夢」と呼び、その外側を「烏羽玉(うばたま)」と呼ぶ。


 ソラたち外守(そともり)と呼ばれる人々は烏羽玉に広がって、夢見の領土に入る人ひとり一人の管理をしている。悪意をもった者や不法侵入者を追い払うため、平和主義の夢見の中では珍しく戦闘力が高い。

 ソラはその(かしら)で「夢見最強」という二つ名にも偽りはない。

 本来ならば、決められた時間監視をしておかなくてはならないが、今は緊急事態――本当はソラが彼女に甘いだけだが――、ソラは万年の夢に降り立った。


 万年の夢はひとつの街だが、たった一本しか道がない。丘のふもとから、らせん状に丘の頂上へと伸びる大通りがあるだけだ。

 しかも、白銀(しろかね)などの精霊を使って良いのは中腹にある広場まで。それから先は少女の話したがっている青麗がいる屋敷まで、えんえんと緩やかな登り坂を歩いて登らなければならない。


 黄緑、緑、青緑。若草に深緑。そして翡翠(ひすい)やエメラルド。ありとあらゆる緑の石がコケさえ生える隙間なく敷き詰められた通りを、五色の布をまとった男女がゆったりと歩いている。


 通りの両側には、似通ったつくりの石家が等間隔に並び、その間に手入れされた木々が並んでいた。

 人の手によって極限まで整えられた美しさが溢れるのが、ここ万年の夢だ。


 ソラは声をかけてくる人々に短くあいさつを返しながら、先を急いだ。

 夢見の人は一般に語り部と呼ばれ、現在過去未来、色々な話をするのを好む。それは万年の夢でも同様で、今朝見た予知夢の話や、古代の王の行いがどうだのという持論を聞かせようとする人々を、たった一言でやめさせられるのが、夢見族外守を七百年勤めてきたソラの外守頭(そともりがしら)としての特権だ。

 まだ還暦も迎えていないような与羽ではこうはいかない。

 夢見は完全に年功序列の民族なのだ。


 もちろん青麗は天地創造以前から生きてきた元予知の女神。夢見で一番偉く、長命だ。御年九千数百歳。『生ける歴史書』と呼べるだろう。


 そして、一番偉い人は最も高いところや奥まったところに住む傾向があり、青麗も例外ではなかった。

 そんなに急ではないものの、何キロとある坂を登るのには骨が折れる。ひっきりなしにかけられる声に返してきたのでなおさらだ。

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