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三 [2/11]

 問題は敵がどの程度の人間なら操れるのか、ということだ。

 意識のある人ならば、脳の片隅に呼びかけるだけで、意のままに操れることも少なくない。

 さきほどの言い争いがその典型。少し心の底に眠るソラを疎む気持ちを育てただけ。気の知れた相手なら与羽でさえある程度相手の気分を変えさせることができる。


 しかし、意識のない人を操るのはそれよりも難しい。

 呼吸心拍などが正常で意識がないだけなら、自身が脳の代わりになり指令を出せばいい。大勢を操る場合でも、あらかじめ戦闘パターンを決めておけば、後は勝手に操られた相手がそれに基づきやってくれる。

 そうすれば今のように似通った攻撃パターンの操り人形が完成する。

 これを止めるには相手を仮死状態にする必要がある。仲間を殺すわけにはいかないが、天力を使えば仮死状態にするのも、そこから復活させるのもさほど難しくはない。


 しかし、ソラは風の天力もあると言っていた。

 つまり、相手は脳だけはなく、糸でつながれた操り人形のように直接肉体を操つることもできる。たとえ殺しても、ゾンビのように向かってくる。


 もう冗談を言う余裕はなくなった。嫌な汗が背を伝う。


「ソラ!」


 青麗(せいれい)が叫んでいるのが聞こえる。いつもの神秘的な澄んだ声は影をひそめ、鋭く激しい戦士の威厳が感じられる。


「術者を!」


 ソラが返事もなく駆け出すのがわかる。

 白銀(しらかね)はその場に残り、向かってくる人々を動けなくする呪文をかけている。天力も封じてしまえば、相手はさすがに手も足も出せない。

 動きを封じるだけならば縄で縛る手もあるが、操られていれば縄から抜け出そうと自分の体が傷つくのも構わず暴れる危険性が高い。


 与羽(よう)も天力と動きを完全に封じられる札を取り出し、真っ先に迫ってきた蒼蘭(そうらん)を組み伏せ、貼った。

 呪文による方法もあるし、はがされてしまえばおしまいだが、今は天力を温存することを考える。


 特に動きを封じる術は相手の操りよりも強い力で抑えなくてはならない。

 天力の消費が激しいので、少しでも札で負担を軽減したい。強力な術をかけるためには相応の時間と手間を要するが、その間は、雷乱が守ってくれた。


 すべての術式が完了した後、与羽は次の相手に向かった。

 その相手とは別に、左右から飛び出してくるものもいるが、皆武器はない。一人一人に武器まで持たせて操っていては、指示する戦闘パターンが増えすぎて術者の負担が大きいのだろう。

 与羽は扇につけられた鎖――澪で彼らを弾き飛ばし、目の前の相手に集中した。

 指先で札の残り枚数を確認して、一枚取り出す。

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