三 [1/11]
先ほどまで味方だった者たちが、一斉に襲い掛かってくる。その目に光はなく、何者かに操られているらしいのは一目瞭然だ。
「雷乱、青麗んとこ行って!」
与羽はそれだけ命じて、輝希の方へ走った。
すでに輝希は、自分よりも体の大きな人々に取り囲まれている。
一番外側にいた月魄を手刀で仕留め、輝希の様子を窺う。
輝希は結界を張って持ちこたえていた。その間に、どこからともなく出したスケッチブックに水彩絵の具で絵を描いている。
これが輝希の能力。描いた絵に天力を送り込んで、それを実体化させることができる。
誰もが夢見る能力だが、天力の質と想像力が足りないという壁に当たり、ほとんどが諦めてしまう。
輝希の描いた翼をもつマッチョマンが与羽以外の人をちぎっては投げちぎっては投げの一歩手前の乱暴さで、気絶させてゆく。
このようなしっかりした実態と力を持つものを創り出せるあたり、確かに想像力は豊かなのだろうが、発想は子どもだ。
しかし、確かにこのマッチョマンは強い。与羽が来る必要はなかったようだ。
青麗の方も、雷乱が皆電撃で気絶させていた。
ソラは白銀と二人で、自分の部下を完全に制圧している。
「これが、ソラの嫌な予感の正体?」
「まだ、はじまりです」
ソラは早口に答えはじめた。
「やっとはっきり見えてきました。操りですね。しかもとても強力な。敵の天力が辺りに充満していたのに、気付きませんでした。時間をかけてゆっくり覆ってきたのでしょう。
まだ残っていますね。冷たい、背筋がぞっとするような天力です。今の操りは心――『魂』属性ですが、風の天力も混ざっています。肉体も操れるようですね。気絶させはしましたが、無意味です。動きを封じなくては」
「……いや、もう遅いな」
与羽は体を起こしはじめた、人々を見ながら言った。
気を失っているのに動き出すというのはとても不自然だ。白目をむき出し、ぎこちない動作で立ち上がり、飛びかかってくる。倒されていた敵もだ。
「ゾンビ映画でも撮れそうじゃな、これ」
与羽はまっさきに飛び掛ってきた緑装束の夢見の男を鎖――澪で弾き飛ばしながら言った。
冗談のつもりで言ったのだが、笑う者はいない。言った本人である与羽も、笑いとは程遠い引きつった表情を浮かべただけだ。




