二 [10/10]
日が沈み、夜になってもソラの嫌な予感の正体はつかめない。
「それにしても、簡単に見せかけてその後に悪いことを持ってこようってのは、定石だが性格悪りぃな」
雷乱は背中越しに与羽に言った。
「ほーじゃな」と与羽も膝を抱いて答える。
「寒いか?」
「ちょっとな。初夏だってのにおかしいな」
与羽の返事を聞きながら、雷乱は軽々と与羽を抱き上げ、自分の膝に座らせた。
そして両腕を翼にかえ与羽を包み込む。
「これでいいか?」
雷乱が尋ねた。
「……ありがと」
与羽はほほえんだ。目を閉じ、雷乱に体を預け、耳を澄ます。
「ソラ様、いつまでここにいればいいのですか?」
外守の誰かが尋ねている。
「そうですね。少なくとも、夜が明けるまでは」
ソラの穏やかな声が答える。さすが外守頭、どんなに嫌な予感がして心配していても、それをおくびにも出さない。
「これからどうしますか?」
別の人が問う。
「それは輝希師や与羽と相談して決めましょう」
「あんな小娘と相談したところで、良いことがあるのですか?」
与羽は少しムッとしたが、雷乱の翼の制止もあって何も言わない。
「与羽は優秀ですよ」
ソラは穏やかに反論する。
「彼女はちゃんと今を見ている。役に立ちます」
「何か、俺たちが未来や過去ばかり見て、現実を無視しているような言い方ですね」
トゲトゲした口調で言う。
「そんなつもりはありません、氷里」
「でもソラ様、あなたはあの娘に気をとられすぎです。あなたにはもっと夢見全体のことを考えて頂かなくては。小娘一人と夢見全体を同じはかりにかけるのですか?」
「彩色様、ソラ様だって精一杯やってるんですからその言い方はあんまりです」
「光貴、あなたはいつも偉そうに。私の半分も生きていないくせに。いっつもソラ様の味方につくのね。そんなに次期外守頭の座がほしい?」
いやみをこめた口調で彩色が言う。
「あなたほど強欲ではないつもりですが、彩色様」
光貴も皮肉で返す。
「いいかげんになさい、二人とも。青麗様とご神木の御前です」
ソラが落ち着きはらった口調でなだめた。
「あなたのそういう所が気にくわないのよ」
彩色がヒステリックに言う。
「いつもすまして、聖人面して。気に入らないの。何が夢見最強よ。いい気になってんじゃないっての。ねぇ? 皆」
「そうだ」と何人かが肯定し、「ソラ様を悪く言うな」と何人かが反論する。
「何か、変な感じじゃ……」
与羽が呟いた。
「まさか――。ソラ!」
与羽は立ち上がって叫んだ。ソラが与羽の方へ顔を向ける。
「辺りの天力を探って!」
ソラは言われた通りにして、顔色を変えた。彼のまとっている天力が一気に緊張を帯びる。
それを感じ取って、与羽が流王を抜いた瞬間、集まっていた人の二分の一がソラに、三分の一が輝希に、残りが青麗に襲いかかった。




