二 [7/10]
背に誰かの背が触れる。
ソラのよりも鋭い光を放つ銀髪が見えて、白銀だと分かった。
「すまない。少し遅れた」
白銀はすでに、さきほど与羽のほほを掠めた短剣の持ち主の意識を奪っていた。
「どうってことなぁ」
与羽は手のひらで血を拭った。水を操るのと同じ要領で血を操り、応急処置程度に傷を塞ぐ。
「どんぐらい片付いたん?」
与羽が尋ねる。
「半分くらいだ。俺達が手ごわいのを見て、こちらに集まっている。ご神木の周りには青麗と蒼蘭が結界を張っているから、とりあえず目標を邪魔な俺達に変えたといったところか」
「なるほど」
与羽は言い、よじれた鎖を左手でしごいた。
それだけ情報を貰って、与羽はまた次の相手へと飛び出した。
すぐに、水の壁と出くわす。ここは森なので、とても不似合いだ。
水の壁が与羽を飲み込もうと迫ってくる。
「幻覚か?」
与羽は呟いた。
「本物です、与羽」
すぐに遠く離れたところからソラの注意が飛んでくる。
与羽は左右を見たが逃げる間もなく、波に飲まれた。その勢いのまま、ご神木の近くまで押し流されたが、与羽は水中でも体勢を崩さない。
水は大きな水球になって与羽の体を包みこんでいる。
与羽は滑らかな動きで水の縁まで泳いだ。
手を出そうとしてみたが、水は強い弾力をもって与羽を押しもどす。流王もだめだ。鋭い水にするためには、空気で押さえつける必要があるが、今はその空気がどこにもない。
「おい、これ息がもたないんじゃないか?」
白銀が慌てた口調でソラに問う。
「大丈夫だ」
雷乱が空からもどってきて言う。
「小娘と水は相性が良い。いつまでも持つわけじゃないけどな。十分くらいか……。
術者を探せ。待ってろ、な? 与羽」
与羽は頷き水球の中心に浮かんだ。青くきらめく長い黒髪が広がって美しい。
しかし、次の瞬間空から水球めがけて槍が降り注いだ。
与羽が素早く右手に持った流王でそれを散らしたが、全てをかわしきることはできない。
ソラが槍の降ってきた方へ矢を射た。
しばらくして、一人の男が空からおりてきた。
おそらく、精霊から飛び降りたのだろう。その精霊は、ソラの矢で飛行不能な状態にされたのだが、それを把握しているのはソラと落ちてきた男のみだ。
やむをえず飛び降りたと思えないほど、男の姿勢は安定している。
彼は、落ちざまにどこからともなく長い槍を取り出した。五本。
それを一本ずつ、水球に突き刺していく。




