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二 [1/10]

 薄いカーテンで閉め切られた部屋は薄暗い。

 布地の隙間を塗って入ってくる風は、複数の香のかおりが移って、甘く重く漂っていた。


 その匂いに軽いめまいを覚えた与羽(よう)は、目の前の卓上に置かれた水晶玉に集中することで意識を保った。

 水晶玉の中には、赤みを帯びた靄が渦巻いている。何かが見えそうな気がするが、集中力が足りていない。


 与羽とソラは族長青麗(せいれい)の屋敷に呼ばれていた。

 丘の一番上にある屋敷は、いつも通り薄暗く、占いの道具が散乱している。

 初夏であるにも関わらず暖炉には火が燃え、息苦しさを感じるのもめまいの原因だろう。


「ソラさん、与羽さん、占いの結果が出ました」


 二人を呼び寄せた張本人である青麗は、深い水底のような群青の目で二人を見つめて言った。いつもは人と目を合わせるのを嫌う与羽も、挑戦的に心の底まで見透かされそうな目を見返す。

 白銀(しらかね)雷乱(らいらん)は屋敷の外で待機していてこの場にはいない。


「いかがでしたか?」


 ソラが問う。

 与羽は夢見(ゆめみ)の中では、身分が低いので慣習に従って黙っておく。今は客人ではなく、夢見の一員だ。


 元予知の女神は手元のカードを裏返して見せた。

 与羽はカード占いが苦手なので、青麗の言葉を待つ。ソラもだ。


「今日から四日後、夕刻。風のご神木に火が放たれます。与羽さん火の夢を見ると言っていましたね?」


「はい」


 与羽はうなずく。


「万年の夢に来てからは見なくなりましたが」


「それはあなたがそれを回避する方法を知っているからです。与羽、夢見族族長青麗からの命令です。ご神木に火が放たれるのを阻止しなさい」


「はい」


 青麗の威厳ある物言いに、与羽はそう答えるしかなかったが、それなりに自信はあった。


外守頭(そともりがしら)ソラ」と今度はソラを見つめる。


「はい、青麗様」


「あなたは与羽とともに行くつもりですね?」


 確信的に尋ねる。


「はい。たとえ火が未然に防げたとしても、敵はご神木の回りにいることでしょう。与羽と雷乱だけでは、彼女達の命が危うい。何人か――、少なくとも、わたしは与羽に加勢します。

 もちろん、夢見に残すべき戦力は考えますが……」


「そうですね。十分な防御力を夢見に残さなくてはなりません」


 青麗は別のカードを表がえしながら言う。ソラの言った「戦力」を「防御力」と言い換えたのはわざとだろう。

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