一 [15/15]
「私の勝ちじゃ、雷乱」
与羽がニッと笑うと鋭く尖った犬歯が見えた。
「何か、汚ねぇ終わり方だな」
雷乱はゆっくり両手を挙げ、降参の合図をした後、手の甲で流王を叩いて首から離した。精霊は首を落とされても死なないが、それでも首に尖ったものを突きつけられると不快感がある。
「実戦的って言って欲しいんじゃけど」
与羽はさらっと答えて、ソラ達を見た。
「帰ろうで、ソラ。私おなか空いた」
「分かりました」
ソラは残菊の手前昨夜の怒りを納めて丁寧な口調で言った。
与羽は雷乱とともに客席にあがってくる。流王と鎖は帯の背に挟んであった。
「残菊ちゃん、久しぶり」
ソラの斜め後ろにいた残菊にそう声をかける。
「与羽ちゃん、怪我してない? 大丈夫?」
心底心配そうな問いに、与羽は思わずソラを見た。
「腕を鈍らせないようにするための訓練ですから安心してください」
ソラは残菊に対してそうフォローした。
「でも、火が! 蹴られたり殴られたり――! 痛くないの?」
「多少は痛いけど……」
与羽は左腕をさすりながら答えた。
「まぁ、大けがはしとらんね。動かすのに問題はなぁし、痛みもすぐひくよ」
与羽がそう言っても、残菊は心配そうな顔をしている。
そんな彼女に、与羽は「大丈夫」と満面の笑みを浮かべて見せた。
そこでやっと残菊は「うん……」と淡い笑みを見せてくれる。
「まぁ、ここで話すのもなんじゃし、戻ろうで。おなかすいたしな」
そして与羽は陽気な足取りで闘技場の出口へと向かった。




