一 [14/15]
「……やべ」
雷乱が身を引こうとしたときには与羽は流王を振り下ろしていた。防御に出した天力で強化した左腕に流王がめり込む。
しかし、精霊である雷乱は腕が切り落とされるのも気にせず、与羽の腹を蹴り飛ばした。
与羽は後ろに飛んだが、ダメージを逃しきることはできない。
そこに雷乱が追いうちをかける。
「やってくれたな、小娘」
切り落とされた雷乱の腕は、ボッと小さな音を立てて燃え尽きるように消えたが、すでに天力で復元している。
雷乱はこぶしを握り締め、与羽の側頭部を打とうとした。
「あんたもな」
与羽は流王の鎖を腕に巻きつけ、落とさないようにしてから雷乱の腕を掴んだ。雷乱の前に突っ込む勢いに加え、自分の風の天力で補助しつつ、投げ飛ばす。
雷乱は大きく投げ飛ばされたお陰で、空中で体勢を整える事ができ、背に翼を生やして空へ回避した。姿を自由に変えられるのも、精霊の特徴だ。
与羽は空にまで追う事はしなかった。ただ、流王で水滴を飛ばしあおる。
「仕切り直しだ」
一息ついて雷乱は翼を消し、身軽に地面に降り立った。
「さぁ、小娘。後半戦といこうか」
雷乱は相手をひるませるようなどすの利いた声で言う。
「そうしょうか」
与羽は流王にまとわせた水は消したものの、一見無防備にさえ見える落ち着いた様子で雷乱に近づいて行く。
「あんまり近づいてくんなよ。戦闘中だぜ」
そんな与羽に、雷乱は軽く腕を広げる余裕を持った動作で応じた。
お互いかなり近づいているが、ぎりぎり間合いに入らない距離を維持している。
「その通りじゃな」
与羽は皮肉をこめて言い、流王を開いて固定した。
すばやかったが雷乱もすぐに反応して、火球を放ちながら跳び退った。
それを水で打ち消しつつ、与羽も後ろへと大きく跳ぶ。
間髪を入れず、与羽は頭の上で扇子を回しはじめた。
鎖を持ち、高い音を立てながら回される扇子。それがまた青みを帯びた水を纏う。
与羽は流王を投げた。流王は雷乱の顔めがけてまっすぐ飛ぶ。
雷乱はそれを防御用の天力を纏わせた右手ではじいた。
与羽はその間に追い風で加速しながら、間合いを詰める。
さっきのお返しと言わんばかりに雷乱の腹を踏みつけるようにして蹴った。
反動で大きく跳び下がって、また跳び出す。
それを雷乱の赤い炎が迎え撃つ。
一方の与羽は天力で身を守りつつ、要についた鎖で手元に引き戻した流王で炎を散らして、強引に間合いを詰める。
そして、雷乱のまたの間を力一杯蹴り上げた。雷乱は精霊で天力の塊なので、そこが急所なわけではないが、予想外の攻撃にひるんだ。
その首に与羽が閉じた流王を突きつける。




