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一 [13/15]

 与羽が流王を振った。到底雷乱に届く距離ではないが、キラキラ鋭く光を反射する水滴が飛んだ。

 天力で鋭く尖るように固めた氷に近い水滴。


 雷乱が赤い炎を放ってそれをかき消す。

 そして、その炎の中から、まばゆい稲妻が。


「……っそ。流王!」


 与羽はもう一段階流王の出力を上げ、左手だけで流王を構えた。


「迎え撃つ気か? 感電するぞ」


 白銀(しらかね)が呟いた。


「そうでもありませんよ。左手の篭手は指先まで覆ってありますし、あの扇子には地に付くほど長い鎖がついています」


 雷乱の稲妻が流王で大きく逸れていった。稲妻を作る天力は電気とほとんど同じ性質をもつので、金属製の流王と鎖を伝って地面へと逃げていき、天力と籠手で流王を持つ手を守った与羽へのダメージは皆無だ。


 しかし、間髪を入れず赤熱した炎が与羽を包み込む。

 激しく燃える炎の音と熱気が客席にまで届いた。


「ソ、ソラ様。与羽ちゃんは大丈夫でしょうか?」


 残菊(ざんぎく)が立ち上る熱気に汗をうかべながらおずおずと尋ねる。


「大丈夫だと思いますよ」


 ソラは炎の合間からのぼる白煙を指差した。水を操って耐えている証拠だ。


「与羽の水は他の水使いの水に比べて丈夫です。混ぜものがしてありますからね」


 与羽の天力は純粋な水属性ではない。同じ位の割合で風の成分も含んでいる。水を風で覆い相手の攻撃を逸らしたり、結合力の弱い液体の水を氷並に固めたりする事ができる。

 ということで、与羽は半空中戦も得意で、炎から飛び出した。風で補助すれば、五メートル位なら余裕で跳べる。


 今度は閉じて固定した流王を鎖を持って回転させている。

 風を切る鋭い音が響く。


「跳んだな、小娘」


 雷乱が与羽の方へ指を突き出した。稲妻が宙を駆ける。


 与羽は流王がついていないほうの鎖の先を下に投げた。鎖が伸び、先端についていた(やいば)が地面に刺さる。

 流王を振り下ろして稲妻を逸らし、さきほどと同様、電気は地面へと逃げた。


 与羽は重力に任せて降下しながら、刃を左手で鎖を引っ張って引き抜き、「流王!」ともう一度叫んだ。

 流王の最大出力一歩手前。

 流王の周りを水が取り巻き、キラキラ輝く。その激しさは炎のよう。

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