一 [12/15]
闘技場は万年の夢のはずれにある。夢見の多くが戦いを好まないため、隅に追いやられたのだ。
使用機会も少なく、年に一度外守頭ソラ主催で武道大会が開かれるが、その参加者は外守のみで、観戦者も外守のみという小規模なものになっている。
ちなみにソラが外守頭になって主催してから三百年余り、彼はこの大会で負けたことがない。
いつもは自分が戦うフィールドを今回は見下ろす。
与羽と人の姿になった雷乱が向い合って立っていた。
まだ始まったばかり。与羽はちらりとソラ達を見たものの、何も言わず雷乱に飛びかかった。
手には長い鎖のついた銀色の扇子を持っている。
しゃらんと澄んだ金属音を響かせて扇子を開き、それで雷乱の首を狙う。
雷乱がすっと横に避け、与羽は振り返りざまに扇子を投げた。
この間に与羽は扇子が閉じてしまわないように固定しているはずだが、動きが滑らか過ぎてどのタイミングで行っているのかソラにも分からない。
大きく弧を描く扇子を雷乱は体をそらす事でかわそうとしたが、かわしきれずにほほがぱっくり切れた。傷口から彼を形作る黄色い天力が炎のように溢れ出した。
雷乱や白銀は精霊と呼ばれる種族。血肉ではなく、大気に満ちる不可思議なエネルギー――天力でその身体が形作られている。
万年の夢の広場に住み着く妖精よりも大きな体をしているが、妖精よりも不安定なのが特徴だ。天力を持つ人間に使役されなければ、この世界では長く存在できない。
雷乱に扇子がかすったところで、与羽は扇子の要からのびる鎖を引いて、扇子を手元にもどす。
「いくぜ、流王」
与羽がニヤリとしながら扇子に声をかける。
扇子を使うとたいていの人が風を操るものだと思うが、与羽の扇子は風も操れるものの、水属性。名前は流水波紋扇。愛称は流王だ。
流王には他者の手に渡っても使えないように、何重かに封印がしてあり、それは持ち主の与羽か製作者の声と天力がないと解くことができない。




