第8話
すると、利香は一度美玲の顔を伺った後
「いや、そんなことはないよ!!部屋は月末に発表される討伐ランキングの優秀者が決めることができるんだ」
真はいまいち利香の言っていることが分からなかったので
「討伐ランキングって何?」とおもむろに聞いた。
すると利香は、またもや美玲の顔色を窺ってから言った
「君たちも見たと思うけど、悪魔はこの世界にいまやあふれているの。でも一般人は気づかないで生活しているわ。そいつらを私たちハンターが倒しているっていうのは美玲から聞いたよね?」
明と真がうなずくと、利香は続けた。
「そこで私たちの組織では倒した数および種類によってランキングをつけて、さっき言ったように部屋の交換や武器の改造といったことができるようになるの」
利香の説明を聞いた明は、はっと気づいた
「それってRPGゲームと同じだよな!!」
利香はその言葉を聞くと、すこし表情が硬くなったように見えたが、すぐに笑顔になり
「その通りだよ!!理解できる?」
明と真はまた頷く
「話が早くて助かるわ。でもこれはゲームじゃないからね!悪魔に倒されたら死ぬよ?」
利香の発した「死ぬ」という言葉に、明と真は今まで感じたことのないような重みを感じた
真(さっきの感じといい、今の言葉といい、もしかして利香さんはここで討伐していくうちに誰か大切な人を失ったのか)
利香はまた笑顔に戻ると
「それじゃあ、案内を続けよっか!!」
そう言ってまた歩き出したので、明と真もついて行こうとした。
その時だった。遠くから「お~い、美玲、利香~!!リーダーがお前らを呼んでいるぞ~」
利香と美玲はその言葉を聞くと、こちらを振り返ると申し訳なさそうに言った
「あ、ごめんね。君たちには本当に悪いんだけど、案内は終わりね。またゆっくりしたときにきっちり案内するから今日のところは部屋に行っててくれない?お願い!!」
美玲もそれに続けるように
「明君、真君本当にごめんね!!それじゃあ、私たち行くね」
明と真はもう少し聞きたいことはあったもののしょうがないなと思い
「わかったよ!それじゃあ、俺と明は部屋に行ってる。ありがとうな」
「俺からも本当にありがと。案内してくれて」
利香と美玲は笑顔で頷くと、呼ばれた方に駆け走っていった。
美玲と利香の姿が見えなくなるまで、明と真は見た後、部屋へと向かって行った。
向かっている最中、明と真は気になっていることを話していた。
「なんか、俺たち美玲に言われてこんなところに来たけど、大丈夫なのだろうか」
「ああ、そうだな。今頃はもう妹にも親にも忘れられてるんだろうな」
二人して思いっきり溜息を吐き、それにしてもと真は呟いた
「美玲は俺たちに何かを隠している。そう思う。最初に利香が来た時からそうだったけど」
明も同意見だったようで、頷きながら言う
「ああ、それは俺も思う。それにたぶん美玲の方が利香よりも強い気がするんだ。さっきとか、いちいち美玲の顔色を窺ってから俺たちに話していただろ、おかしい」
「そうだな。NOsという言葉や利香と美玲の立場、なにかあるな」
そうして話している内に、部屋についたので二人は部屋の前にたどり着いたので、部屋へ入った。
同じ頃、美玲と利香はリーダーの部屋の前にたどり着いていた。
そしてドアを開き、部屋の中へ入ると、リーダーがこっちに気付くと
「遅い。呼びに行かせてから10分だ。二人して何をしていた?」
美玲は動じることなく、リーダーの前に立つと、少し怒りをにじませながら言った
「私が連れてきた二人に案内してました。それで何か用ですか?」
利香は美玲の態度に少し慌てながらも、リーダーの前に美玲と同じように立ち
「そ、そうなんですよ。案内をしてたんです」
リーダーは二人を睨むと
「一人で案内しても良かったんじゃないのか。まあ、それはいい。本題に入ろう。飛鳥と翔にはもう伝えているが、お前ら4人で任務にあたってほしい。美玲お前はついさっき帰ってきたところで悪いが、チームリーダーとして行ってもらいたい」
その言葉に美玲は真剣な顔になって、リーダーに尋ねた
「その任務はそんなにも大変になりそうなんですか。飛鳥と翔だけでも結構強いというのに、私と利香を同伴というのは」
利香も驚いていた。
(なんせ飛鳥と翔は組織の中でNOsに入る二人、それに加えての美玲。これはおそらく)
リーダーは続けた
「そう。この任務で行ってもらう場所には悪魔の一つ上の存在である魔王が関係している可能性があるんだ。それで万が一の場合を備えてお前らを含めた4人にお願いだ。飛鳥と翔はもう準備している。お前たちも準備に取り掛かり、万全の状態で挑んでくれ」
美玲と利香は了承して、リーダーと握手を交わした
「わかりました。必ず魔王を倒してきます!」
そして美玲と利香はすぐさま、リーダーの部屋を出ると自分の部屋へと向かった
残されたリーダーは誰もいなくなった部屋でつぶやいた。
「アイツらに言っていないが、もしかしたら楓を殺した魔王かもしれん。もしもそうなら」
その後は口に出すのも嫌なのか、リーダーは悲しげな顔でドアの向こうに目を向け、ため息をついた。