第1章第6話(18話) 明の選択⑥
どれほどの時間が経ったのだろうか。
この鏡の国には時間の経過を知らせてくれるものは何もない。
たくさんの木がそびえ立つ自然という背景ではあったが、
太陽?の光は何分何時間経っても変わらない位置。
最初は時間を数えようと思っていたが、結局途中で諦めた。
今は少しの休憩を挟みながら、アイナさんと戦い続ける時間が続いていた。
とはいえ、アイナさんは手加減をしつつのため、
俺だけが大量の汗を掻いてはいるが
アイナさんを汗一つ掻かず、息も乱してなどいない。
まあ、そもそもロボットのような生命体であるアイナさんにそう言った
疲れや汗の概念はないのかもしれないが・・・。
「とりゃぁぁぁぁ」
俺の渾身の振り下ろしが彼女の剣に当たる。
「セイッ」
そしてそのままの勢いで剣を振り上げ、彼女の剣の柄を狙う。
「お。今のはなかなかいい動きですよ!!」
しかし、その打撃が当たるすんでのところで、彼女の剣が横向きに振られる。
その結果、逆に俺の剣が宙を舞い、地面へと落ちていった。
「はぁはぁ。ちょ。アイナさん。強すぎるって」
今ので当たると思っていた剣戟があっけなく回避されてしまったこともあり、
そのままの勢いで地面に寝転がった。
疲れた・・・。
正直、普通の生活を送っていた時よりも遥かに辛い運動をしている気がする。
だけど、弱音を吐いてばかりもいられない。
いつかは分からないがいずれは俺も美鈴さんのように
戦闘に駆り出されるかもしれない。
そうなった時に足手纏いになったり、役に立たないのはなんだか嫌だった。
それに戦いの最中で死んでしまったら・・・。
俺は頭をブンブンと揺さぶった。
その先は今はまだ考えたくはなかった。
「よし。休憩終わり!!アイナさん、行くよ」
俺は立ち上がると、そのままアイナさんへ向かって突進していった。
「これでもうそろそろ1000回になりますね」
俺がまた休憩と称して寝転がっていると、
アイナさんはそんなことを言いだした。
「うん?なにが??」
「あ~。はい。明さんが私の戦いを挑んでこられた回数が今ので、
993回目となります。なのであと7回で1000回であるということをお伝えしたのです。」
「へ、せ、千回!?」
俺はあまりの驚きに声を大にしてしまった。
途中から数えていなかったとはいえ、
そんなにも自分が剣を彼女に向けていたとは思いもしなかった。
まだ200回くらいしか行っていないと思っていたのに
、まさかの回数だった。
しかし、最初のころに比べると剣の振り方も体の運び方にしたって
幾分かスムーズになってきており、
アイナさんに当たるようになるのももう一息のところまで
来ていたことを鑑みると、当然の経験回数なのかもしれない。
「そっか。それじゃあ、あと7回でどうにか当てるようにするよ」
気持ちを新たに俺はまた立ち上がると、剣を構えた。




